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平凡、けれど……

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 昨夜、数年振りに夢を見た。

 もしかすると単に私が覚えていないだけかも知れないが、それが懐かしく思えたことだけは確かである。


 内容は、何と言うことの無いものだ。朝起きて、仕事をして、飯を食って……そんな何気ない日常を、三人称視点から眺めるだけ。あまりにも平凡だから、これが映画だとしたら退屈過ぎてつい寝こけていたことだろう。


「…………くぁ」


 いかん、思い出すと眠気が来る。追い払うつもりで頭を振るが、くらくらして尚更眠くなった。

 もう少しうとうとできる時間はあるが、仕方ない。私は緩慢な動きで布団を抜け出し、少し早めの朝食を摂ることにした。


 普段私は、朝にいつも同じものを食べる。

 白米、目玉焼き、焼いたソーセージ、熱い珈琲。夢の中でも同じものを食べたな、なんてことを考えながら朝食を口に運ぶ。

 食べたら支度をして、戸締りを確認してから出勤。この時うっかりしていて、今日はいつもより早いことを忘れていた。

 ……早く着いても、やることはないんだがな。間抜けな自分に呆れつつ、戻るのも面倒なのでそのまま会社に出勤することにした。


「おはようございます」


 挨拶をして入ってみるが、やはりこの時間では誰も居ない。私はいつも通りにタイムカードを切ろうとする手を慌てて止め、一旦席に鞄を置いた。


 誰も居ないオフィスはしんと静まり返っていて、冷房も動いていないのに妙な涼しさを感じる。空気も何だか柔らかくて、仕事中のぱりっとした空気がまるで嘘のようだ。

 

「…………ふぅ」


 一息吐き、椅子に腰を下ろす。ぎぃ、と言うばねの軋む音が矢鱈大きく響いて、けれど嫌な感じはしない。

 なんだか不思議と心地良くて、私はぼおっと天井を見上げた。

 自分一人の職場を照らす蛍光灯は、ちりちりと寂しそうに鳴いていて。それがまた、空気を柔らかに解しているのが分かった。


 ……夢とは違う始まり。こびり付いた日常を少し離れた、特殊でけれど普通の一日。

 私は微かに微睡み、薄らと同じ夢を俯瞰しながら――――


 ――――案外退屈でもないな、なんて静かに呟いた。

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