雨夜に響く音
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妙な悪寒がして、不意に目が覚めた。
目を開いたか閉じたかも曖昧な暗闇の中、ばたばたと窓に打ち付ける水滴の音と湿気た匂いだけが矢鱈と強く感じられる。そこから考えるに、どうやら外は現在雨天候であるらしい。
カーテンの隙間から外を覗く。しかし、風に煽られ窓に衝突した雨粒が起こす波紋と滝のように軒から滴る水滴のせいで殆ど何も見えなかった。
――――ざぁあ、ざぁあ。
――――ごぉ、びゅう。
――――ばち、ばた、ぎし、ずちゃ。
視界の悪い暗室の中で、風雨が起こす無数の音だけが強烈な存在感を示す。
その音は不協和音と言うには整っているが、音楽と呼ぶにはあまりにも粗雑で乱暴だ。少なくとも、思わず耳を塞ぎたくなる雑音であることは間違いない。
その音から少しでも離れたくて、暗い部屋を手探りに脱出した。
部屋の外はしんと静まり返っていて、先刻までの喧しさは全くと言って良いほど感じられない。
胸を撫で下ろし、壁伝いに居間へ向かう。
漸く目も慣れてきた。落ち着いて、居間の扉を開けようとして――ふと、手を止める。
――――びちゃ、ぴちゃ、ばたた、ぴしゃ。
居間の中から、音が聞こえる。良く良く考えれば居間にも窓はあるから、それも別におかしくはない。
まぁ、自分の部屋よりましなのは間違いないだろう。そう思って、改めて扉のノブに手をかけた。
――――がちゃ。開けた途端、ぬるりと足先が湿ったような感触がした。
見ると、足元に水溜りができている。正面には、濡れたレインコートを着た人影が立ち尽くしていた。
泥棒――そんな言葉が頭をよぎる。私は咄嗟に後退ったが、人影はそんな私を尻目に窓から豪雨の中へと消えて行った。
……何だったんだ、一体。いや、それよりも雨に濡れた身体で居空きなんて。あいつのせいで、床がびしょ濡れじゃないか――そんなことを考えながら私は手探りに電気のスイッチを探し、押した。
――――そして私は絶望し、慟哭した。




