皆は何処
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すう、と肌が真白く冷えた。
それは恐怖か、違和感か。自分でも理解できないその感覚に無理矢理名前をつけるなら、この二つが最も近しいのではないかと思う。
冷え切った表面と比べて、内側は汗ばむような熱を感じていた。こちらには明確な名前がある、それは高揚感と言うものだろう。
表と裏。同一である筈の感覚は乖離していて、自分の身体であることさえも不確かに思える。さながら、多重人格と呼ばれる病のような。
しかし、誤魔化しは効かない。此処に在るのは紛れもなく自分自身であり、他の誰かでは断じて無いのだ。
覚悟を決めると、途端に乖離が解けて一つに纏まっていくのを感じた。
いつも通りの、温い感覚。皆が入った後の、葛湯みたいにとろみが付いた風呂と同じ温度に戻っていく。
それでも、濡れてしまった部分だけは奇妙な熱を持ったままだ。それはきっと、私自身の温度じゃないから。
――ぽつ、ぽつと身体から水が垂れる。その度に皆の存在が身体から離れていくような気がして、心細くなった私は溢れたそれを一生懸命に舐め取った。
それからは、さっきのような熱を感じない。砂の混じった水は口に含むとざりざりして、そして酷くひんやりしている。
その冷たさに触れて、私は思わず頬を歪めた。
――――ああ、一緒だ。これで、皆と。
冷たさが染み込んだ身体は、皆みたいに冷たくて。それを飲み込んでいくほどに、私は孤独じゃないんだって気分になれる。
もっと、もっと欲しい。私は独りになりたくない。
溢れた分と、身体に染み付いていた分。全てを飲み干した私は、『皆』を求めて歩き出した。
大丈夫。きっとすぐに『皆』は見つかる。
だって――ほら。
燃えるような熱も、凍てつくような冷たさも。世界中の何処にでも、それは満ち溢れているのだから――――




