未完成
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――――かちり、かちり。
一つ一つ、ばらばらの欠片を合わせていく。
神様も、こんな風に欠片を寄せ集め組み合わせて世界を作り上げたのだろうか。ならば今の私は神様か、などと馬鹿馬鹿しい妄想を浮かべながらまた一つ合わせる。
小さな欠片は少しずつ、大きな一つに変わっていく。
かちりかちりと音を立て、小さく大きな世界を作る。
青くて甘い、水底ほどに深い集中。その中で、存在しなかったものが明確な形を示し始めた。
小さな粒のようで、けれど何処か大きくも思えるそれはとうん、とうんと規則的な音を響かせる。
その音はまるで、鼓動する心臓のようだった。
心地良いいのちの子守歌に耳を傾けながら一つ、また一つと欠片を正しく嵌め込んでいく。
――――かちり、かちり。
その音は全て同じなようで、嵌める欠片それぞれが異なる音を奏でている。それがまた、思わず微睡んでしまうほどに心地良い。
二つの子守歌の中、必死に眠気を堪えながら欠片合わせを続け、いよいよもう少しで完成と言うところ。そこでぷつんと意識が絶えて、暗い光に沈んでしまう。
すう、と穏やかに意識が落ちていくその感覚は、何処か生まれ落ちる瞬間の多幸感に似ていた。
◇
――――かちり、かちり。
暗光の中で、いくばくかの時間が過ぎた。
身体を起こし、ぼくは緩やかに「今」を認識する。
その途中、ふと目に入ったものを見て――くす、と静かな笑いを溢した。
「なんだ、そうだったのか」
視線の先には、さっきの欠片合わせがあった。それは未完成なままで、けれど欠片は残っていない。
これは結局、完成しないものだったのだ。そう理解すると寝るまいと必死になっていた時間が急に馬鹿らしく思えてきて、悲しいような面白いようなと言う半端で微妙な気持ちになる。
「じゃあ、もう、良いか」
そうこぼして、ぼくはふらりと部屋を出た。
…
――――かちり、かちり。
明かりの消えた、暗い部屋。未完成な欠片はそこでひとつ、ぼんやりと進む時計の音に身を委ねながら、誰にも知られず静かな眠りへと落ちていった。




