表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/200

未完成

投稿しました!

良ければ評価、感想よろしくお願いします!

 ――――かちり、かちり。


 一つ一つ、ばらばらの欠片を合わせていく。

 神様も、こんな風に欠片を寄せ集め組み合わせて世界を作り上げたのだろうか。ならば今の私は神様か、などと馬鹿馬鹿しい妄想を浮かべながらまた一つ合わせる。


 小さな欠片は少しずつ、大きな一つに変わっていく。

 かちりかちりと音を立て、小さく大きな世界を作る。

 青くて甘い、水底ほどに深い集中。その中で、存在しなかったものが明確な形を示し始めた。


 小さな粒のようで、けれど何処か大きくも思えるそれはとうん、とうんと規則的な音を響かせる。

 その音はまるで、鼓動する心臓のようだった。

 心地良いいのちの子守歌に耳を傾けながら一つ、また一つと欠片を正しく嵌め込んでいく。


 ――――かちり、かちり。


 その音は全て同じなようで、嵌める欠片それぞれが異なる音を奏でている。それがまた、思わず微睡んでしまうほどに心地良い。

 二つの子守歌の中、必死に眠気を堪えながら欠片合わせを続け、いよいよもう少しで完成と言うところ。そこでぷつんと意識が絶えて、暗い光に沈んでしまう。

 すう、と穏やかに意識が落ちていくその感覚は、何処か生まれ落ちる瞬間の多幸感に似ていた。


       ◇


 ――――かちり、かちり。


 暗光の中で、いくばくかの時間が過ぎた。

 身体を起こし、ぼくは緩やかに「今」を認識する。

 その途中、ふと目に入ったものを見て――くす、と静かな笑いを溢した。


「なんだ、そうだったのか」


 視線の先には、さっきの欠片合わせがあった。それは未完成なままで、けれど欠片は残っていない。

 これは結局、完成しないものだったのだ。そう理解すると寝るまいと必死になっていた時間が急に馬鹿らしく思えてきて、悲しいような面白いようなと言う半端で微妙な気持ちになる。


「じゃあ、もう、良いか」


 そうこぼして、ぼくはふらりと部屋を出た。


       …


 ――――かちり、かちり。


 明かりの消えた、暗い部屋。未完成な欠片はそこでひとつ、ぼんやりと進む時計の音に身を委ねながら、誰にも知られず静かな眠りへと落ちていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ