柘榴石の女神様
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「…………初めまして、人の子よ。お会いできて光栄です」
その日、僕は――――神様が、本当に居ることを知った。
◇
「おはようございます、少年。良く眠れましたか?」
「……ええ、はい。おはようございます、女神様」
朝七時。目を覚まして居間に出ると、そこでは目を疑う程に美しい女性が待っている。
彼女は女神様だ。しかし、名前は特に無いらしい。
彼女曰く神の中にも位の高低があるそうで、初めから名前を持っているのは多くのものや高次元の存在を司る高位の神様だけなのだと言う。初対面の時、名前を聞いた際に「端石の神である私には名前などありません」と少し悲しそうな口調で教えてくれた。
彼女と出会ったのは、ほんの数日前のことだ。
幼い頃、近所の山川で拾った綺麗な鉱石。当時からお守りとして大事に持っていたそれを眺めていた時、石が突然に輝き出したのだ。
何事かと呆然としているうちに、光が強くなって……気付けば、この女神様が目の前に居たと言う訳である。
以降、彼女は僕の家を自身の社としている。
まぁ元々家族は海外へ単身赴任中で一人暮らしのようなものだし、部屋も余っているからと普通に受け入れていた。
「……あ、そうだ」
ふと、昨夜決めたことを思い出す。つい声を漏らした僕に、女神様は怪訝そうな顔をした。
「如何されましたか、少年」
「貴女のことです。少し思うところがあって昨夜調べたんですが、貴女の元になった石は柘榴石らしい、と言うことが分かりまして」
「ええ、そうですが……と言うか、調べずとも聞いてくださればお答えしましたよ?」
「それは今更です。……と、そうではなく。僕がしたいのは貴女の名前の話です」
「名前……ですか?」
「ええ。いつまでも女神様、と言うのも不便だなと思いまして。安直ですが柘榴様、で如何かと」
伝えると、彼女はぽかんとした表情を浮かべる。しかし直後、その顔がぱぁっと明るくなった。
「柘榴……柘榴。私の、名前……」
名前の話をする彼女は、どこか悲しそうに見えた。だから名前をあげれば喜んでくれるかも、と思って考えたのだが……想像以上に、喜んでくれているらしい。
噛み締めるように「柘榴」の言葉を復唱し、彼女は花のように鮮やかな笑みを僕に向けた。
「ありがとうございます!柘榴……大事にしますね!」
喜ぶ女神様……いや、柘榴様の笑顔に僕も思わず笑みを溢す。
柘榴様との生活は、まだ始まったばかりだ――――




