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夜に溶ける

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 金曜の夜、コンビニで酒とつまみを買った。

 別に酒は好きではない。寧ろ、幼い頃に酔った父の醜態を見て以降嫌悪感さえ抱いていた。

 そんな私がこの日酒を買ったことに理由があるとすれば、それはストレスの蓄積だろう。酒嫌いな人間でもそれでなければ晴らせない気分があると言うことは、大人になってから嫌になる程理解させられた。


 コンビニの袋片手に暗い路を歩く。その途中、奇妙な姿をした人物とすれ違った。

 夜闇に紛れるような黒に身を包んだ人影。暗い上にだぼっとしたパーカーを着ていたせいで体型は良く分からないが、身長は小学校の背の順で後ろから六、七番目と言った程度だろうか。要するに、大人としてはかなり低い。

 顔もフードで隠していて見えないその姿に、思わず何処かの探偵漫画で表現される犯人役を連想した。


「……中二くらいって、ああ言うの好きだよな」


 私にも覚えがある。中学生の頃は漫画の世界に憧れ、突然現れた敵と戦っても返り血を隠せるなとか自分は闇の住人だからとか考えて黒い服ばかり選んでいた。文字通りの黒歴史だが、誰もが通る道だと思いたい。


 夜に子供が一人歩きなんて、とも思うが言ってもまだ二十時前だ。人通りの少ない道ではあるが住宅地だし、少し先には夜中まで人の多い大通りもある。

 まぁ、大丈夫だろう。そう考えながら歩き出そうとした時、ふと気が付いた。


 ――――鉄臭い。

 

 錆びた鉄のような臭いが、角の先から漂って来る。

 思わず後退りしたが、どの道そこを通るしか家に帰る道は無いのだ。意を決し、私は前に歩を進める。

 そして――見た。


「――――ぁ」


 ぬるり、と革靴の先に液体が触れる。鉄錆の中に腐敗した肉の生臭さが混ざった悪臭があまりにも強烈で、飲んでもいないのに足元が覚束ない。


 ヒトだったであろうナニカが、そこには在った。


「は……はは」


 乾いた笑いを溢しながら、私はその場に崩れ落ちる。

 ある種の規則性を持って切り分けられた肉片。恐らくは、何かしらの目的を持って並べられたモノ。

 私は目撃したのだと確信した。この作品を作り上げた、呪わしき芸術家の姿を。


 きっと、この後私は殺される。被害妄想ではなく、不思議とそんな確信があった。

 ……けれど、そう確信していても。背中に鈍痛が走るまで、私は眼前の光景から目を離すことができなかった。

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