飛び込み
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偶の休み、私は電車に乗って遠出をした。
普段なら休みにわざわざ家を出ないのだが、今日に限っては理由無くそうしたいと思ったのだ。
そうして心地良い振動に身を委ねていると、不意に車内アナウンスが響き渡る。
『間も無く――駅、――駅です。お出口は――――』
どうやら、もうじき次の駅のようだ。私は気紛れに運転席の方へ歩み寄り、正面に近付く駅舎を眺める。
ふと、その風景に影が差した。
真正面の風景を遮るように、走行中の電車の前に突然障害物が現れて――――
――――ぽぎゅ。そんな鈍い音が、スキール音を塗り潰した。
赤い花火が正面で弾ける。花火玉は電車の窓を突き破り、鋭利なガラス片と共に私の真横をすり抜けた。
全身が痛む。割れたガラス片が皮膚や肉に深く食い込み、痛覚神経を傷つけているのだろう。
けれど私は、痛みに蹲ることさえできずにいた。
呆然。その表現が最も正しい。
車両内に響く阿鼻叫喚も、焦った車掌の通信も、遥か遠くの電子的な音声のようだ。
花火玉は人体で、眼前で起きたことは飛び込み。事態はなんとなく把握できている。しかし恐怖も感動も、あらゆる感情が自分自身を満たさない。
敢えて言うなら「戸惑い」だろう。私は今、己の混乱そのものに違和感を覚えている。
困惑している。驚愕している。恐怖している。感動している。あるべき感情とそうでない感情が入り混じり、最早判別が付いていない。
……ただ、確実なことがあるとするなら。
それは私が、眼前の光景に見惚れていると言うその事実だけだろう――――




