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怠惰な休日

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 目を覚ますと、空は既に赤く染まっていた。

 時計の針は午後五時を指している。どうやら私は、半日以上眠り込んでいたらしい。


 折角の休日を潰した悲壮感よりも早く、強烈な虚脱感が私を襲った。

 ずっと眠っていたせいかも知れないが、奇妙な程に行動意欲が湧いて来ない。休みの内にやりたいことは幾らでもあった筈なのだが、その全てがあまりにどうでも良くて、私はごろりと布団に倒れ込んだ。


 随分寝たもので、意識はちっとも微睡まない。その割身体は砂風呂の中にでもいるかのように重くて、一寸たりとも動かすことができなかった。

 泥のように重く濁った肉体と、水晶のようにクリアな意識。乖離したその感覚に悩みながら呆然と天井を見上げていると、不意に部屋の鍵を回す音がした。

 誰だろう――思って顔だけを玄関に向けると同時に扉が開き、外から見慣れた顔が入って来る。


「何だ、お前か」


 入って来たのは妹だった。興味を失った私は顔を背け、また呆然と天井を見上げる。


「何だ、は無いでしょ。折角ご飯作りに来たのに」


 不満げな声で妹は言うが、今の私には「そうか」の一言を言う気力も残っていない。結局私は妹に返事をすることなく、布団の上でぼんやりし続けた。

 そんな私に呆れながら妹は言う。


「全く……休みだからってそんなにだらけて。そんな調子じゃ一生結婚できないよー」


 余計なお世話だ。言いたかったが気力が無いので、吐息のように「あー」とだけ返す。

 妹の言葉と、私の吐息。その応酬をしていると、部屋に美味しそうな匂いが漂い始める。


「できたよ、食べよ」

「……おー」


 正直、身体を起こしたくは無かったが。まぁ作ってもらったものを無駄にするのも良くないので、半ば強引に身体を起こし食卓に着く。


「それじゃ、いただきます」

「……ます」


 「適当すぎ」と文句を言う妹を無視して箸を取り、食事を口に運ぶ。

 懐かしい家庭の味は、私の体に満ちていた空虚をほんの少しだけ満たしてくれた。

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