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世界が終わる直前に

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『明日、地球は滅亡します』


 ある日の朝。出勤前に食事を摂りながらぼんやりとテレビを見ていると、緊急速報と銘打ってそんなニュースが流れて来た。

 曰く、地球に巨大隕石が接近しているらしい。隕石と言うよりも惑星に近い大きさを持ったそれは超高速で地球に向けて飛来しており、観測圏内に入った時点で最早手遅れだったそうだ。


 何故、突然そんなものがあらわれたのか。ふと確認したSNSでは陰謀論や宇宙人による攻撃など、馬鹿げた理論が様々に展開されている。

 

 だが正直、そのニュースに私が抱いた感想は「ああ、そうなんだ」と、たったそれだけだった。

 現実感が無い、と言うのも理由の一つだが、それ以上に割とどうでも良かったのだ。

 怯えてパニックを起こしたところで、何かが変わる訳でもない。それよりも今は「仕事に行かなくて良さそうだし、今日は何しようかな」なんてことの方が、遥かに重要なように思えた。


 「地球最後の日、貴方は何をする」――なんて、どこか懐かしい問題に思索を巡らせる。

 残す意味を失った貯金を放出するか。いや、そもそも店なんてやっていないかも知れない。

 なら、今の混乱に乗じて童貞を卒業するか。とは言っても正直、あまりそれに興味を持てない。


 ――暫く考えてみたが「普段と違う特別なこと」をやる意味はあまり見出せなかった。

 ……まぁ、分かっていたことだが。私はどうやら、存在として酷くつまらないものであるらしい。

 外の絶叫と嬌声が入り混じった阿鼻叫喚こそが、この状況に於いて人間の本来取るべき行動なのであろうが。私には、冷めた心でそれを聞き流すことしかできない。

 無欲、と言うよりは諦観に近いものだろう。それはある意味、人間性の屈折と呼ぶべき性質だ。

 

 ……いや、存外私は平凡な人間かも知れない。何故なら、普段の私はこのような思考回路をした人間ではないからだ。

 困惑や混乱が人の脳に起こす影響は大きい。であれば今の思考は、私の混乱が生んだ突然変異なのではなかろうか。


 ……何を考えているのやら。自身でさえ掴み切れぬ思考に振り回されながら、私は呆然と空を見上げる。

 明るかった空は既に、暗い夜に呑まれていた。

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