夕立の再会
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帰り道、突如として夕立が降り出した。濡れるのが嫌で近くのバス停に逃げ込むと、先客の姿が目に入る。
――――幻のように美しい女性が、そこには居た。
「……キミも、雨宿り?」
呆然と雨空を見上げる彼女の姿は、どこか空想の世界を彷彿とさせる。
その現実味の無い美しさに思わず見惚れていると、不意に女性が話しかけて来た。
「えっ、あっ……は、はい」
「そうなんだ。……ボクも同じ」
……そんな筈がない。唐突に降り出した夕立を避けて来たと言うには、彼女は乾き過ぎている。
漆のような黒髪も、雪のように白いワンピースも。そのどちらにも水気は感じられなくて、残暑の蒸し暑さすら否定しているかのようだ。
――彼女はずっとここに居た。けれど、何の為に?
この町は、お世辞にも大きな町とは言えない。寧ろ、田舎と呼んだ方が在り方的には近いだろう。この古臭い小屋のようなバス停も、そんな在り方の一つだ。子供の頃から残り続ける、この町の原風景の一つ。
「……人を、待ってたんだ」
困惑するこちらの考えを読んだかのように、女性は穏やかな声音で告げる。そのまま何も言わず耳を傾けていると、彼女は懐かしむような口調で語り出した。
「どのくらい前だったかな。この町でさ、生まれて初めての友達ができたんだ。
ボク、その頃は引っ込み思案だったんだけど……彼が手を差し伸べてくれて、一人ぼっちにならずに済んだ。
そう思うと……友達よりも初恋、の方が近いかもね。
それでさ。引っ越す前に約束したんだ、彼と。
大人になったら、いつもの待ち合わせ場所だったここにまた集まろう……って、さ。これまでは、一度も会えていなかったんだけどね」
そう言って、彼女はこちらに笑いかける。
「……懐かしいね。初めて会った時も、こんな夕立が降ってて。まぁ、あの時と立場は逆だけど」
「ぁ…………」
ふと、思い出す。記憶の底に眠っていた、可愛らしい初恋の少女の姿を――――――
「……久し振り。やっと、また会えたね」




