夜の棺【前編】
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――こつ、こつ、こつ、こつ。
夜道には、足音だけが響いている。
半端に発達した町は人間以外の存在を拒絶し、けれど残されたままの田舎らしい閉塞感は人間の存在すらも受け入れようとしていない。
……この町は今、緩やかに死へと向かっている。
――こつ、こつ、こつ、こつ。
暗い町を、漫然とした足取りで散策する。
途中、ほんの気紛れで微かな街灯の灯りを辿りながら歩くことにした。そうして暫く進んだ先で、小さな溝川に辿り着く。
酷く濁り、光を反射する機能さえ喪失したその姿は新月の夜とほんの少しだけ似ているようにも思えた。
……皮肉なものだ。夜を美しいものたらしめる光を映せなくなって初めて、それに近付くことができるなど。
「あれは……何だろう」
そんなことを考えながら視界を巡らせた時、低い夜空の中でぽつんと光る星明かりを見つけた。
この川には、幾つか橋が架けられている。その内一つの真下で、小さな光がぼうと弱々しく燃えていた。
好奇心に駆られて近付いてみるとそれは複数の段ボールで形作られたハコで、光はその内から透けているのだと言うことに気付く。
段ボールハウス、と言うものだろうか。テレビで稀に観ることはあるが、実際に見たのはこれが初めてだ。
「……おや?これは珍しい、こんな時間にお客さんとは」
物珍しさから何となくそれを観察していた時、不意にハコが開いて中から老齢の男が姿を現す。
男は、現れた場所に似合わぬ小綺麗な身なりをしていた。
丁寧に整えられた髭とパリッとした服装は、どこか高貴ささえ感じさせる。そればかりか身体から漂う香りは恐らく高価な香木のもので、その有様はホームレスと言うよりもまるで瀟洒な老紳士と言った風だ。
「良ければ上がって行くかい?……なんて、別に大した場所ではないけどね」
優しい笑みを浮かべ、男はハコの扉を開く。
私は些細な興味から、彼の誘いを受けることにした。
〈続く〉
皆様どうも、作者の紅月です。
はい、本日から三日間こちらの続きもの作品を投稿するわけなんですけれども。
実際のところ、これは一つの反応調査でもあります。
今回三話続きものを投稿して、閲覧数などの反応を見て今後もこういうタイプの話を混ぜ込んで行くか決めるつもりです。
て訳で、良ければ「どう思ったか」を教えてくださると助かります。




