表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/200

忘れ、歪む

投稿しました!

良ければ評価、感想よろしくお願いします!

 平凡の中で、何かが深く歪んでいる。

 

 街を歩く。其処に在るのは、普遍的な日常だ。

 制服を着た若者が放課後の予定を語り合い、スーツを着こなした青年が顔も見えない相手に幾度も頭を下げ、老爺老婆が公園に集って球遊びをする。

 

 そんな平凡の足元には、夥しい数の死が満ちている。

 ふと見下ろした足元に蝉の死骸を見つけた。何者かに踏み潰され、ぐしゃりと潰れた翅と腹の破片は見るからに少ない。恐らくは、蟻にでも持ち去られたのだろう。

 またある場所には、蜻蛉の亡骸が転がっていた。

 先刻の蝉程凄惨な状態ではなかったものの、眼球にくり抜かれたような穴が空いており伽藍洞な内部が露出している。朽ちたか食われたか、それは定かではない。

 

 取るに足らぬ死の集合。五分の魂の無価値。

 それはある意味当然で、けれど思考の屈折でもある。

 命は平等、などとは言わない。人であれ獣であれ、その重みには自然と序列ができるものだ。

 だが、故にこそ恐れている。その屈折が、いずれ人という種をも食い尽くすのではないかと。

 蟲の亡骸が価値持たぬ風景の一つであるように、人の命もいずれ価値を忘却された風景の一つになってしまうのではないかと時折不安に思うのだ。

 ……いや、思えば。人という生き物の在り方は、初めからそのようなものだったのかも知れない。

 

 ――人は当然に、人の名を忘却するのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ