心揺さぶる熱
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生まれて初めて見るそれは、一瞬で私を虜にした。
揺らめく光と、他の何物にも例え難い香り。手をひりつかせる痛みすらも愛おしい。
今もこの手に残る歪んだ傷は、私にあの香りを届けてくれる。その香りと輝きが、私に生きる意味をくれる。
眩いようで淡く、静謐でありながら時に恐慌を運ぶ。そんな矛盾を体現するが如き美しさは、他の何かで代替できるものではない。
究極の美を追い求めることを芸術と呼ぶのならば、私も一人の芸術家を名乗れるだろうか。
絵も、彫刻も、宝石も、陶器も。人が作りし如何なる美も、私の心に熱を与えることは叶わなかった。
私が自らそれを求めることにしたのは故にである。
ただ、心の底から欲しかったのだ。あの日を超える、究極的な感動が。
人は私の探究心を「狂気」と呼ぶだろう。或いは、何かしらの病名を付けるのかも知れない。その意思を拒絶することは、私には不可能だ。
私の美が、人の理にないことは承知の上である。だからこそ私は、自ら作り出す道を選んだのだが。
それでも止まらないのは私が「人」だから、その一言に尽きるだろう。
美を追い求める心など、人間が制御できるものではない。例え異常だとしても、求めてしまうのが人と言う生き物の性なのだ。
……今夜も良い風が吹く。冬らしく乾いた良い空気だ。
さぁ今日も、新たな作品を作るとしよう――




