遠雷と雨
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この感情は、恋に似ている。
遥か遠くで、空に眩い亀裂が走った。
遅れて聞こえて来る小さな雷鳴。多分そろそろ雨が降るな、と考えながら私は帰路に着く。
家に帰る方が流石に早いだろう、と油断していたのだが、その想定は甘かったらしい。初めの雷鳴から五分も経たぬうち、街は凄まじい豪雨に包まれた。
「……ふぅ」
近くにあった店の軒下に避難し、一息つく。
この日の雨は、水の匂いが強かった。個人的な感覚だが、そう言う雨は唐突に降り出してすぐに止むものであることが多い。今回もそうだろうと数分待っていると予想通りに雨足は弱まり、強烈だった筈の豪雨はあまりにもあっさりと終わりを迎えた。
さて、帰ろうか――そう思って軒下を出た瞬間、不意にまた遠くの空がぴしりと割れた。
また唐突に降られても困るからと、私は小走りで家に戻る。幸いにも、雨が降り出したのが丁度家に入った直後だったお陰で今度は何とか濡れずに済んだ。
「……良かった」
安堵からか、私はそんな呟きを溢して部屋へ戻る。
そうして着替え始めた直後、窓の外に光が射した。晴れ間が射したのかと窓の外へ目を向けるが、そんなことはなく空は真っ白なままである。
光ったのは、またしても雷だった。それを残念に思いながらも何故か、私は窓の側を離れられずにいる。
最初降られた時に服が濡れてしまったし、そうでなくとも着替えの途中で半裸のままだ。このままでは風邪をひくし、何より女としてはしたない。
分かっているのに、空から目が離せない。
そのまま数分じっと空を見つめて、漸く待ち侘びた瞬間が訪れた。
「……わぁ」
思わずそんな声を漏らしながら、遥か遠くに走った光の亀裂をじっと眺める。
瞳に映るその輝きは、不気味な程に美しく見えた。




