墜ちる炎
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その日は雲一つない晴天だった。つまらない授業を聞き流しながら真っ青な空を眺めていた時、不意に視界の端でほんの小さな黒雲が揺らいだ。
傘なんて持って来てないぞ、雨は勘弁してくれ――そう思いながら黒雲の方に目を向ける。それとほぼ同時に黒雲はぼうと赤く燃え上がり、轟音を轟かせた。
「何、今の音?」
「爆発?」
突如遠くから響いた耳慣れぬ音は若者の好奇心を掻き立て、俄かな喧騒が教室を支配する。誰一人状況を理解できていない中で、僕だけが全てを理解していた。
浮かぶ黒雲は上空で大きくその形を広げ、地に巨大な鉄の霰を落とし始める。
――がごん!どしゃ、めき!
霰が地に落ちる音は、教室までも届いた。その度に騒がしくなるので教師は授業を諦め、確認と言って教室を出ていってしまう。
止める者の居ない喧騒は、いよいよ歯止めが効かなくなった。生徒達は各々スマホを取り出し、起きた事件を漸く理解することになる。
数分もする頃には鉄の霰は降り止み、音も全く聞こえなくなった。
……が、その代わりとでも言うように。ぽつり、ぽつりと赤とも黒とも知れぬ霙が窓を濡らし始める。
霙は落ちる程に地を、窓を不快な色に染めた。
やがて、焦げた鉄のような臭いが教室に充満する。知らないままであれば笑い話になったそれも、知ってしまえば恐怖を孕むものだ。
必然、阿鼻叫喚が学校全体を包む。校舎どころか土地さえも揺るがす程の絶叫に耳を塞ぎ、僕は思う。
――存外、珍しいこともあるものだ。
たったそれだけの思考を脳の奥底に沈め、呆然と赤黒く染まった窓の向こうを眺め続けた。




