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旅路の果て、光の中へ

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 森の中を歩いている。

 なんとなく、不安を煽られる状況だ。虫の声は変に大きく聞こえるし、泥の匂いも妙に強い。枝葉が風に揺れる音は生き物の動作音のようで、聞こえる度にびくりと周囲を見渡してしまう。


 しかし、立ち止まることはしなかった。

 実際、ここはとても怖い。恐怖で動けなくなってしまいそうだし、前に進むことを止めて引き返したいとすら思ってしまう。

 だが、ここを抜ければ目指した場所に辿り着く。そう必死に自分を鼓舞して、前へ前へと進み続けた。


 実際のところ、本当に辿り着けるかは分からない。辿り着ける筈だとは思っているが、何分深い森の中だ。意図せず道を間違えているかも知れないし、辿り着く前に倒れることも十分に有り得る。

 そう思うと余計に怖くて、不安で、逃げ出したいと思ってしまう。


 けれど、それでも。歩くことは決して止めない。

 待てば好転する訳では無いし、寧ろ待ったり引き返したりすることで余計に迷う可能性もある。

 ならばいっそ、自分を信じて進むことが一番確実な道の筈だ――まぁ、半ば逃避のような理屈だが。多分、間違ってはいないと思う。


 歩いて、歩いて、歩いて――時に木の根に躓いたり、段差を踏み外して軽く捻ったり、野生の獣に襲われたりなんてしながらも、ひたすら真っ直ぐに進んで。ふと気付くと、少し先に懐かしい小さな光が見えた。


 ああ、漸く辿り着いたのだ――そう思ってそっと胸を撫で下ろし、最後の力を振り絞る。

 あと少し、もう少し。痛む足をほぼ無理矢理に動かしながら、近くて遠い光を目指す。

 あと少し、だが油断はしない。目の前で石に躓くことも、足下に崖があることも、可能性はあると想定して、一歩一歩確実に進む。


 そして――漸く、伸ばした手が光に触れた。

 瞬間、暖かい光が全身を包む。それは痛みを癒すようでありながら、しかし寧ろ痛みを強調するようでもあった。

 けれど、その痛みさえ心地良い。まるで、これまでの苦労を称賛されているようで。


 ……すぅ、と光が身体に染み込んでいく。

 そして――私の意識は、光の中へと呑まれていった。

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