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目が潰れない程鮮やかな

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 気が付くと、日が傾き始めていた。太陽の光は白さを弱め、赤と橙とを混ぜたような色の光を放っている。

 とても鮮やかで強烈な、けれど不思議と直視しても眩しいと感じない光。それはまるで幻想のようで、けれど確かに存在している。


 思わず、すぅと手を伸ばした。

 届く訳はない。もし仮に手が届いたとして、掴めるものである筈がない。分かっていながらも手を伸ばしてしまったのは、ただ純粋な感動故だ。

 それは確かに美しいが、芸術と呼ぶにはあまりに日常的過ぎる。けれど何故か、どんな美よりも心を捕らえて離さない。

 そんな美が、目の前に存在している――それに手を伸ばさずに居られる方が、私には到底理解出来ない。


 何故美しいのか、何故こんなにも惹かれるのか。それに理由があるとすれば、恐らく本能だと思う。

 夕暮れの、昼程の強さを持たぬ弱々しい、けれど落ちる間際で鮮烈に存在感を示す陽光。その様はまるで、人生の在り方のようだ。

 死の間際、一際強く示される生命の力。それに強く惹かれるのは、人間の――否、生物全ての本能なのでは無いだろうか。


 夕日は緩やかに落ちて行く。その後を追いかけるように、私は前へ足を進めた。

 地平線に落ちて行く夕日を、少しでも長く繋ぎ止めるかのように。何処までも続く直線の道を、駆け足になりながら歩き続ける。


 後少し、もう少し。追いかけて追い付くものでも無ければ、長引くものでも無いと知って。それでも後少し、もう少しだけと祈りながら、落ちて行く日を追いかけた。


 ……どのぐらい走ったのだろう。ふと、日が落ちるのが止まった気がした。

 無論、そんな訳は無い。落日が止まるなんて、そんなことは絶対に有り得ないことなのだ。

 ならば、それは錯覚に過ぎない。けれどそんな錯覚に縋り、私は足を止め地平の太陽をじっと見つめた。


 目が潰れそうな、けれど同時にそんなことは起きそうもない弱い光。

 歩かなければ、きっと太陽も待ってくれる――そんな根拠の無い妄想を抱きながら、私はそこに立ち止まって静かに太陽を眺め続けた。

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