雲の行方
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ふと、足を止めた。
特に何があった訳でも無い。本当にただなんとなく、ほぼ無意識にという感じだ。
見上げると、空には雲が浮かんでいる。幼い頃は雲を見てそこに様々な形を見たものだが、今はもう「雲」としか思えない。
ぼう、と眺めていると、柔らかな風が吹き抜けた。乗せられるように雲が流れて、それに合わせて足も動く。
足元も前も見ないまま、一歩一歩と歩を進める。危なっかしい行動だが、不思議と何かにぶつかるとかそういう不安は感じなかった。
そのまま暫く歩いた先で、雲が別の雲に触れた。そしてそれは混ざり合って、一つの大きな雲になる。
なんとなく、綺麗だと思った。なんのことは無い大きな、けれど入道雲と言う程でもない、何型でも無い一つの雲を。
陽の光との加減だろうか。それとも、他の雲との配置だろうか。考えてみるが、答えらしい答えは何一つとして出て来なかった。
ぼんやりと、その雲を眺める。風に流され、動く雲を目で追っているからなのか、自分の足が動いているのかそれとも止まっているのかは正直あまり分からない。
元々は別々の雲だからか、風の流れで雲の形は変わって行く。けれど不思議と重なったままで、ずれて離れたりすることは無い。
形だけがゆらゆらと不規則に入れ替わりながら、けれど大きさは変わらない。そんな在り方がどう言う訳か、愛しく思えて堪らなかった。
しかしそれも、ついに終わりがやってくる。
一瞬びょうと強烈な風が吹き抜けて、驚いて目を閉じてまた開いて……そうすると、重なっていた雲はいつの間にか別々に割れてしまっていた。
ああ、戻ってしまった――そんなふうに思いつつ、二つの雲を見比べる。
大きめな雲。もこっとしていて、どこか動物的な雰囲気。
小さめな雲。さらりとしていて、どちらかと言えば綿に似ている。
久方振りに雲への想像を膨らませ、少し笑って視線を落とした。
前へ進む。空を揺蕩う雲のように、風が吹いて示す方へ。
あの雲のような、綺麗な出会いに期待しながら――のんびりと、急がず先へ歩き始めた。




