果ての見えた旅路
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……随分、長く歩いて来た。けれど、夜はまだ見えない。
まだ一日も経っていない、という事実が信じられず、何度も瞬きを繰り返す。けれど一瞬視界が暗くなるだけで、空が黒くなることは無い。
まぁ、無駄だというのは分かっていたので、目線を戻してまたゆっくりと足を前に動かし始める。
歩けども、足が疲れることは無い。夜を目指しながらも目的の無いこの旅路は、何故か疲れて止まることも、面倒になって引き返すことも、決して許してはくれなかった。
そんな果ての見えぬ苦痛を耐え、ここまで歩いて来られたのは、それまでに見た幾つもの光景が理由だろう。
本当に、多くのものを目にして来た。それは同じ道の中にありながらも異世界のように様々で、けれどどれも単純なものばかりである。
一つとして同じものが無いのに、どれも単調なぐらいシンプルなもの。それはまるで、人の在り方そのものを表しているようだった。
十人十色。そんな言葉が持つ意味を、明確に体現しているような――独りよがりで、自分勝手で、同じ感想を抱けない光景。
そんなものを見て来たから、今まで絶望なく歩いて来れたのだと思う。別に面白いばかりでは無い光景だったが、同じものが無い辺り退屈だけはしなかった。
……恐らくだが、この旅路は遠からず終わる。一切の確証は無いものの、なんとなくそうだと感じている。
日が暮れて、夜が来る。そうなれば足は勝手に止まって、長い旅もあっという間にはいお終い。
待ち侘びていた時でもあるが、それでも歩き続けた道のりを思えば――まぁ、少しだけ名残惜しく思わなくも無い。
後どのくらい歩くのか、それは自分でも分からない。
だが、取り敢えず進んでみよう。
前へ、前へ、前へ――足をとにかく動かし続けて、夜を目指してみる。それはきっと苦しい道だが、歩き切れなくは無いと思う。
少なくとも――退屈だけは、しないだろうから。




