邂逅、幾星霜を超えて
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自分がいつから生きているのか、もう全く覚えていない。
少なくともホモ・サピエンスではあるようなので、最長でも大体四十万年前からか。実際そのくらい経っているような気もするが、あまりに退屈過ぎた所為で経過時間を誤認している可能性もあるだろう。
その間、幾度もの別れを経験した。父が死に、母が死に、友が死に、妻が死に、我が子が死に、孫までも居なくなる中で、自分だけ何一つ変わらず在り続けた自分を疎んじたこともある。
いつからか、私は不死だった。いつぞやの友曰く「二十代半ば」の容姿をしているらしいので、恐らくその辺りのことなのだろう。
何故不死なのかは分からない。もしかしたら昔は覚えていたのかも知れないが、今はまるで覚えが無いのでそもそも初めから不明だったのかも知れぬ。
ただ死なず、生き続ける時間は退屈の一言に尽きた。
初めこそ無茶や無謀を楽しんだものだがそれもほんの数年で飽き、後はただぼうと伽藍洞に在り続ける植物のような時間を過ごすしか無かった。何処ぞで聞いた即身仏とやらはこうしていればなれるのか、などと考えて試そうとしたこともある。が、面倒だし仏を信じてもいないので別に良いかとすぐに止めた。
……まぁ、仏になるのは止めた訳だが、過ごし方は仏でなくとも仙人に近いものだったとは思う。
人と関わることを止めて山奥で暮らし、腹は減らぬので飯も食わず、虚無な私を植物と誤認した鳥が肩に止まり髪の毛の中に巣を作る。それも、特に気にならなかった。
そんなある日、私の家に珍しく人が訪れた。
華奢な体をした女だ。その姿には薄らとだけ見覚えがあるが、何処で見たかは思い出せない。
女は安堵したような、そんな不思議な顔をしていた。
何故そんな顔をしているのか、山で遭難して思わぬところで人に出会えたからだろうか――そう思っていたところ、女がぎこちなく口を開いた。
「ああ、良かった……嬉しいです、貴方に会えて」
やはりか。そんな私の思考を否定し、女は笑顔で想定外の言葉を告げる。
「やっと、会えましたね――ご先祖様」




