表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
193/200

邂逅、幾星霜を超えて

投稿しました!

良ければ評価、感想よろしくお願いします!

 自分がいつから生きているのか、もう全く覚えていない。

 少なくともホモ・サピエンスではあるようなので、最長でも大体四十万年前からか。実際そのくらい経っているような気もするが、あまりに退屈過ぎた所為で経過時間を誤認している可能性もあるだろう。


 その間、幾度もの別れを経験した。父が死に、母が死に、友が死に、妻が死に、我が子が死に、孫までも居なくなる中で、自分だけ何一つ変わらず在り続けた自分を疎んじたこともある。

 いつからか、私は不死だった。いつぞやの友曰く「二十代半ば」の容姿をしているらしいので、恐らくその辺りのことなのだろう。


 何故不死なのかは分からない。もしかしたら昔は覚えていたのかも知れないが、今はまるで覚えが無いのでそもそも初めから不明だったのかも知れぬ。

 ただ死なず、生き続ける時間は退屈の一言に尽きた。

 初めこそ無茶や無謀を楽しんだものだがそれもほんの数年で飽き、後はただぼうと伽藍洞に在り続ける植物のような時間を過ごすしか無かった。何処ぞで聞いた即身仏とやらはこうしていればなれるのか、などと考えて試そうとしたこともある。が、面倒だし仏を信じてもいないので別に良いかとすぐに止めた。


 ……まぁ、仏になるのは止めた訳だが、過ごし方は仏でなくとも仙人に近いものだったとは思う。

 人と関わることを止めて山奥で暮らし、腹は減らぬので飯も食わず、虚無な私を植物と誤認した鳥が肩に止まり髪の毛の中に巣を作る。それも、特に気にならなかった。


 そんなある日、私の家に珍しく人が訪れた。

 華奢な体をした女だ。その姿には薄らとだけ見覚えがあるが、何処で見たかは思い出せない。

 女は安堵したような、そんな不思議な顔をしていた。

 何故そんな顔をしているのか、山で遭難して思わぬところで人に出会えたからだろうか――そう思っていたところ、女がぎこちなく口を開いた。


「ああ、良かった……嬉しいです、貴方に会えて」


 やはりか。そんな私の思考を否定し、女は笑顔で想定外の言葉を告げる。


「やっと、会えましたね――ご先祖様」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ