「 」
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これは、世界というものがまだ一つの島で完結していた頃……この星に、地球という名が付く前の話である。
島には、七つの枠があった。国、などと言う名前は付いていなかったが、それとよく似た概念だ。
枠同士はある時は強く結び付き、またある時は敵対し争い合った。この点には、現代とさしたる違いはない。
ただ、そこには神秘があった。
当時、それに対して「特別なもの」としての認識があったとは思えない。が、我々にとって「そう」と呼べる存在であることは紛れもない事実だ。
そんな、神秘が当然となる世界に生まれた一人の男。
名などと言う記号の不要だった時代に於いて、その男は「 」と呼ばれ恐れられたと言う。
「 」は当時ですら異様とされるほどの神秘を自在に操り、一つの枠を支配した。
そこで終わらないのが、人の欲と言うものである。
「 」は軍を率い、他の六枠への侵攻を開始した。
「 」の力を受けて異様な神秘を振るう軍隊は凶悪なまでの強さを誇り、枠は残り一つにまで塗り潰されることになる。
しかし最後の一枠、それを塗り潰さんとした彼の侵攻は、たった三度夜を迎えるうちに終わりを迎えることになった。
最後の一枠――そこは、どの枠よりも矮小な場所。
「 」はそれに、何の警戒も抱かなかった。
……惜しむらくは。「 」が己を、それ以外の全てを超えた存在と信じて疑わなかったことか。
最も矮小な枠。そこにはそんな土地に似合いの、我欲さえも矮小な愚かしくも愛すべきたった一人の超越者が存在していた。
超越者は「 」の攻撃に対しその悉くを模倣し、相殺した。そればかりか「 」にすらできぬことを平然と行い、圧倒したと言う。
苦戦を強いられながらも「 」は、己が力を過信するが故に退く選択肢を持たなかった。
結果「 」とその軍隊は、たった一人の超越者によって打ち倒されることとなる。
その後、平穏を望む超越者は争いを避ける為に地を割り、世界を幾つかの島に分けた。その際、副次的に神秘と言う概念が彼らの記憶から忘却されたことで世界は今の形に落ち着きました……とさ。
――どこまでが真実なのかは分からない。
或いは、全てが嘘でしかないのかも知れない。だが個人的には、それならそれでも構わないと思うのだ。
何故なら――これは「物語」なのだから。




