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白い斑点

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 その日の月は、酷く濁った色をしていた。

 光はまばらに白濁していて、明るいと言うより気味が悪い。影の形は百足のようになっており、元は兎と形容されたものであるとは到底思えない程だ。


 その月光が不吉に思えて、急ぎ足で道を歩く。

 見ているだけでも不快なそれは、照らされていると体調不良を訴えたくなる程に不気味だ。まるで毒が降り注いでいるような――いや、そこまで複雑な表現は不要か。

 「悍ましい、照らされていたくない」。たったそれだけで事足りる。


 そんな気分だったから、帰路に近道を選ぼうと思ったこともごく自然な流れだった。

 会社から家までの帰り道――その途中には、時間を短縮できるルートというものがある。が、普段はあまり使うことが無い。


 それと言うのも、その道はその道でこの月程で無くとも不気味なのだ。

 人気の少ない、細い小道。路地では無いが、それと呼んでも差し支えない程度には細い。

 そこは普段から人通りが無く、昼夜問わずとても静かだ。そこに面した玄関や店の入り口がない、と言うのも理由の一つと言えるだろう。


 けれど、不気味なのはその静けさとは別のものだ。

 赤黒い、血のような色をした奇妙な街灯。それが昼夜問わず薄暗い道を、異様な雰囲気で照らしている。

 狙っているだろう、と思わずにはいられない程、その光は道の雰囲気に似合う。不気味の相互作用、とでも言ったところだろうか。


 何がある訳でも無いが、その雰囲気がどうにも好きになれない為、普段は通ることが無い――が、今日は例外だ。何故ならそれ以上に、月の光の気味が悪い。

 

 歩いて行くと、割とすぐにその道へ続く分岐点に出た。私は一切迷うことなく、分岐をいつもと別方向に曲がる。

 そうして辿り着いた道は、やはり酷く不気味だった。

 恐る恐ると、けれど早足に歩いて行く――と、不意に珍しいものを見つける。


 それは今日の月明かりに似た、まばらに白濁した少女だった。

 まばらに、痣のように白い斑点の浮かぶ肌は、病を疑いたくなってしまう。よく見ると髪も同様の斑点が浮かんでおり、少し牛のように思えた。尤も彼女の肉体は、牛と呼ぶには貧相だが。

 無視しても良かった――が、思わず声を掛けていた。


 ……それが齎す結末は、この世の誰も知ることが無い。

 ただ――ハッピーエンドにはならない、それだけは既に確かである。

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