無限色
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夢を見た。酷く奇妙な夢だった。
奇妙と言うか、最早夢であるかも怪しい。ぐにゃりと歪んだ世界の中を、ただひたすらに歩く映像だ。
ピカソの絵――いや、そもそもそれを見たことが無いので想像でしか語れないが、恐らくそれに近いと思う。
ぐねぐねと曲がりくねったカラフルな線が、上下左右の全てを埋め尽くしていた。
線それぞれは類似の色で塗られてはいたが一センチとて同じ色の場所は無く、グラデーションのような感じで無限に色が変わっている。それにはどこまでも終わりが無く、中には見たことすら無い色さえあった。
不気味だと思いつつ色の中を歩いて――いや、今思うと泳いでだったか。いや、やはり歩いて行ったような気も……まぁ、移動手段などどうでも良いか。とにかく進んで行くと、不意に突き当たるような感じがした。
壁かと一瞬思ったが、どうやらそうでは無いらしい。触れると手が沈むように入って行き、直後には身体ごと呑み込まれ、その先にはまた色彩の道が広がっていた。
どこまでも、どこまでもその繰り返し。良い加減うんざりしていたが、どういう訳かそんな文句を吐くことも出来ない。本当に、ただ前に進むこと以外のあらゆる行動が取れないのだ。
正直、頭がおかしくなりそうだった。夢であることは流石に理解出来ていたが、同時に否定したくもなった。こんなイカれた世界、自分の脳内にあって欲しくないと思って。
……それから、何時間――いや、何年?どのぐらい歩いたか分からないが、気付くと意識が戻っていた。
直後、清々しい気分になる。懲役を終えた囚人ってのはこんな気分か、と割と本気で思うぐらいに。
最悪の目覚めと言えば最悪だが、ある意味最高の目覚めだ――そう思って、ふと自分の腕を見る。
瞬間、全身に悪寒が走った。
あの色が、腕を染めているように見えた。
幻覚かなんて、どうでも良かった。ただ心から怖くなって、そして思わず――
――――自分の腕に、手近なカッターを振り下ろした。




