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行き止まり

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『この先、行き止まり』


 この街に引っ越して来てすぐの頃、そんな看板を外れで見かけた。

 覗くとその先はL字道で、行き止まり自体は視認出来ない。けれどなんとなく空気が澱んでいるような感じがして、その時は一旦引き返した。


 そこに入ってみようと思ったのは、言ってしまえば気紛れだ。

 別に酒は飲んでいないし、クスリをやっている訳でもない。本当にただの好奇心、ふと思い出したら無性に気になりだしてしまっただけである。


 そうして久しぶりに訪れたその場所には、ほんの少し違和感があった。


『この◼️、行き◼️◼️り』


 看板が、奇妙な程に錆びている。最後に見たのはほんの数年前の筈なのだが、その当時の記憶と比べるとまるで塩水をかけ続けたかのようにぼろぼろで、文字が一部読めなくなってしまっている。


 ……まぁ、然程気にすべきことでも無い。大方、この数年の間に、塩水を長期間かけ続けた暇な悪戯少年でも偶然現れたのだろう。そんな風に考えて、その道に足を踏み入れた。


 瞬間、ずぅ、と何かに呑まれるような感覚がした。

 気のせいか、空気が異様に澱んでいる。滞留しているとか最早そんな次元ではなく、まるでそこで完全に停止しているような。

 引き返すかとも考えたが、何故かその思考とは裏腹に身体は奥に歩き始めた。

 止めようとしても止まらない。まるでそうすることがごく自然な流れであるかのような、そんな足取りで奥へ奥へと進んで行く。


 L字路を曲がると、その先は確かに行き止まりだった。

 朽ちた骸が、数え切れず転がっている。道を塞ぐように――否、仮にそれらの骸が無くても、この道は塞がっていただろう。その証拠に無数の骨の隙間から、石の塀が覗いている。


 それを見て漸く理解した。何故、看板があんなにも錆びついてしまっていたのかを。

 確かに、暇人は居たのだろう。ただし、かけていたのは塩水では無く血液だったようだが。


 自分もきっと、あの看板の錆になる。その未来を確信し、自身の気紛れを強く憎んだ。

 憎んで、憎んで、憎んで。行き止まりになってしまった状況では、自分が死ぬその瞬間まで――そうすることしか、出来なかった。

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