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暗く、黒く

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 酷く、寒い朝だった。

 屋内で、おまけに羽毛布団に身を包んでいると言うのに身体の震えが止まらない。その感覚は風邪の悪寒に似ていたが、気分は別に悪くなかった。


 時計を見ると時間はいつも通りだが、窓の外は奇妙に暗い。

 奇妙に、というのは、別に言葉の綾でも何でも無い。本当に、ただ奇妙に暗いのだ。夜の暗さとはまた違う、敢えて言うなら無の暗さとでも言うのだろうか。紙に墨をベタ塗りしたような闇が、外を完全に覆っている。


 何事かと気になって、寒さに耐えつつ這うようにして布団を出た。

 そうして窓の近くに寄り、カーテンを僅かに開けて外を見る。そこに広がっていた光景は、ある意味想像通りのものだった。


 ただひたすらに、黒。星も無ければ月も無い、何なら世界自体が無い。そんな永遠のような黒が、視界を覆い尽くしている。ここまでなっていると最早、家の中が普通に見えていることが逆におかしく思える程だ。


 流石に夢だ、そう気付く。

 だってこんなこと、ある訳がない。常識の範疇で考えて、普通に有り得ないことだ。

 そう思って頬をつねると、予想通りに痛くない。夢だと確信して安堵したのとほぼ同時に、ぞわっと寒気が背筋に走った。


 寒い。夢だとすれば、それすらおかしい。

 夢はあくまで夢である。ならば痛みが無いのと同じように、温度も感じない筈だ。

 だとすれば、何故寒い?何故暗い?何故痛まない?

 それらを繋ぐ結論が、不意に頭の中に浮かんで――心の底から恐怖した。


 目を覚まそうとする。覚めない。

 死ねば覚めると何処かで聞いた。キッチンへ行き、包丁を喉に突き立てるが、血も流れないし痛みも無い。

 想像が、現実味を帯びてくる。怖くなって何度も何度も身体を突いたが、やはり死ねる気配は無い。


 ただ、絶望した。その時を待っていたかのように、見えていた家の中の景色も暗く黒く閉じて行く。

 そうして、世界は真っ暗になった。すると恐怖も無くなって、心の底から安堵したが――その感情も、闇の中に消失した。

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