繰り返す
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――ジーーーーーーーーーーーー。
古い蛍光灯のような音が響く中、男の声が少女に問い掛ける。
「「人生とはメトロノームのようなものである」。こんな言葉を、聞いたことはないだろうか。
規則的にカチカチと、決まった動きを繰り返す。それは確かに、多くの人々が送る特徴の無い退屈な日常とよく似ているだろう。故に、その連想を否定するつもりはない。
ただ、あくまで個人的な感覚としてだが。私が人生と言うものを初めて連想したのは小学生の頃、扇風機を呆然と眺めていた時だった。
扇風機も、決まった動きをするものである。コードを指してスイッチを入れれば段階的に回り始め、押し変えない限り同じ回転を繰り返す。電源を切れば緩やかに、力を失ってその動きを止めてしまう。
その動きが、生まれて老いて死ぬ人間の一生となんとなく被って思えたのだよ。
……まぁ、それはメトロノームも同じと言えば同じなのだが。どちらにせよ「緩やかに始まり、一定の動きを繰り返し、そしてまた緩やかに終わりを迎える」ものであることは共通している。
だから何、と言う話ではない。要するに「連想の切っ掛けは違えど、結論は同じ」と言うだけだ。どうだ、理解できたか……っておい、何を笑っている?おい、おいってば――」
その声を、少女は静かに聞いていた。男の声は、話したいことは話し終えたとでも言うように前触れもなくぴたりと止まる。
部屋はシン、と静まり返った。その中で少女は恍惚とした表情を浮かべ、その直後に沈澱していた感情を掘り返すかの如く大粒の涙を流す。
懐かしくさえ思える声。独特な感性で、起承転結のない話を唐突に語り始める変人の声は、少女にとって何よりも愛おしいものだった。
……少女は古臭いカセットプレーヤーを抱き締め、もう一度ボタンを押す。また同じ音が響いて、同じ声で同じ言葉が繰り返される――――――




