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亡骸

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 ある日、目を覚ますと、外が奇妙に明るかった。

 窓の向こうから届くその光は酷く不自然で、朝が来た訳では無いのだということが分かる。けれどそれは人工と呼ぶにもあまりに独特で、照明に照らされている訳でも無いのだとなんとなく思った。


 外に出る勇気は無かったので、ほんの少しだけカーテンを捲り外を見る。

 しかし異様な程眩しい割に、カーテンの向こうはとても平凡な夜だった。街はしんと静まり返っており、寝息すら聞こえて来そうな感じがする。


 気のせいかとも思ったが、カーテンを閉めて元通り布団に戻っても外は明るいままだった。さっき確認した外には、光など一つも無かったと言うのに。

 仕方なく勇気を振り絞り、そっと部屋の扉を開けた。

 とうに見慣れた家の景色も、凍ったように静かな夜ではまるで別世界が如しだ。不安に駆られ、幾度も戻りかけながらも、何とか一階にある居間の扉前に辿り着く。


 なんとなく、家族に助けは求めなかった。頼れない、とか、頼りたくない、なんて格好の付く理由では無い。

 ただ、「頼るだけ無駄だ」と。無意識にそう認識していて、だから声を掛けなかったのだ。


 そうして辿り着いた居間は、異様な雰囲気に包まれていた。物理的なものでは無く、感覚的にと言う意味で。

 音はしない。眩しくも無い。ただひたすらに、虚無。

 死を連想させるようなその空気感は足を竦ませ、今すぐ走って戻りたくなる。

 けれど、駄目だ。自分は、この先へ行かねばならない――そんな使命感らしき感覚が胸の奥底で渦巻き、逃げることを許さなかった。


 意を決し、ゆっくりと扉を開ける。そこでは――


 ――――得体の知れない何かが、声も出さずに嗤っていた。


 それが「嗤っていた」というのは、あくまで雰囲気の話である。なんとなく、そういう風に見えたのだ。

 足元には、犬の死骸が数え切れない程転がっている。どれも四肢を鋭利な刃物で斬り落とされ、その上で喉を素手か何かで引き裂かれているようだった。


 嗤っている「何か」は、ちらりとこちらを一瞥してからすぐに消えた。比喩などでは無く、煙のように。

 直後、自分も意識を失ったのでその後のことは良く知らない。ただ、後から聞いた話だと――


 ――――居間には両親の亡骸が転がっていたが、犬など何処にも居なかった、らしい。

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