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狂人は殺さない

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「結論から言おう、君は精神病質者(サイコパス)だ。君が、危惧している通りにね」


 そんな精神科医の宣告は、正直何とも感じなかった。ただ「やっぱりな」と、諦め気味に思っただけで。


 元々、自分にそういうところがあるという自覚はあった。人を傷付けることに罪悪感を覚えられず、痛みに対しての感覚も鈍い。幼い頃……五歳になってすぐの時には公園で小学生と乱闘になり、足が折れているのに全く気付かず、平然と帰ったこともあった。


 その性質は今でも変わらず、何なら余計に悪化しており、一ヶ月前にはバイクに轢かれたがその時は全く痛みを感じなかった。過去の乱闘の時には、ほんの少しくらいは「痛いな」と感じられていたと言うのに。

 その所為か人の耐久限界に対しての感覚も鈍っており、先日カツアゲに遭った際には殴り過ぎて、危うく少年院に入りかけた。


 それを経て病院に来ているのだから、自覚があるのは当然と言えば当然だろう。だから医者の宣告にも、諦観に似た納得しか感じられなかった訳だ。


「ただ」


 ここに来た目的は、治め方や治し方を聞く為である。

 決まり切った結論を聞いて、ようやく本題に入ろうとした――が、そこで医者が言葉を繋いだ。


「君は確かに精神病質者(サイコパス)だ。ただ、それでも快楽殺人者(シリアルキラー)では無いよ」


 ……一瞬、意味が分からなかった。

 精神病質者(サイコパス)でも、快楽殺人者(シリアルキラー)では無い。別に元々イコールで結んでいた訳では無いが、それが違うというのもそれはそれで違和感がある。


「どういう意味です?」

「君は確かに、命に対してあまりに歪んだ価値観を持っている。その在り方自体は精神病質者(サイコパス)と呼んで差し支え無いだろう。

 だからこそ、君は快楽殺人者(シリアルキラー)らしくない。

 これは私の持論だが、彼らは自分を精神病質者(サイコパス)と自覚した上で無意識に診断で一般平均を叩き出す。自覚無く、普通の人間を装うんだ。

 だから――まぁ、確信は無いけど。君は君が危惧する程、悪いことはしないと思うよ。多分ね」


 ……そんな無責任な言葉で、この病院での話は終わった。けれど何故か、矢鱈安堵している自分が居る。

 多分、自分は人を殺さない。無責任でも不確定でも、一旦はそう保証して貰えたからだろう。


 穏やかな心持ちで、雑踏の中に紛れて行く。

 なんとなくだが、先刻より少し自然体で居られるような感じがした。

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