綺麗な花火は穢されて
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それは、ほんの些細な偶然だった。
ただ偶然に昔の友人と街で会い、偶然今日が学生時代にも彼と行った祭りの開催日で、流れで一緒に行くことになったそこで偶然彼と逸れてしまった。
そして、偶然――その現場に、遭遇してしまった。
遠くで、花火の音が聞こえる。携帯が鳴っている気もするが、その音で良く聞こえない。
目の前に広がる光景は、花火よりも余程鮮やかで美しい――と言えるぐらい狂っていれば良かったのだが、残念なことに自分は正常そのものだ。
こんなにも自分が平凡な一般人であることを強く呪ったのは、恐らく人生で初だと思う。その所為で自分は目の前の光景の悍ましさに、祭りの気分を台無しにされてしまったのだから。
その場所に居るのは人だったかも知れない肉塊と、それを殺したらしい犯人という三人だけで、他には特に誰も居ない。
犯人は一心不乱という風に、素手で肉塊を抉っている。その度に顔や服に血がかかるが、全く温度が無い所為で血である感じがしなかった。
……そんな時、突然電話が着信を告げた。と言うより正確には、「聞こえるようになった」感じだ。
気付けば花火は終わっていて、立っていた路地はしんと静まり返っている。そんな中でぼうと電話を手に取って、静かに通話ボタンを押した。
「……ああ、もしもし?ごめん、道に迷っててさ。合流は……いや、悪いけど一旦帰るよ。
ちょっと、服が汚れてさ。着替えたいから、合流はその後で……うん、了解。じゃ、また後で」
そう言って通話を切り、足元のものを見下ろした。
べとぉ、と冷えた血が靴にへばりつく。これは服だけじゃなくて靴も変えなくちゃ駄目だな、なんてことを考えながら「二人分」の肉塊に告げる。
「……駄目だよ、公序良俗は守らなくちゃ。あんな行為を目の前に曝け出されたら、平凡な僕は気分を害して、殺したくなっちゃうんだからさ」




