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押すべからず

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 「押してはいけないボタン」というものがある。

 それは押すと自爆するとか、押すとパニックが起きかねないとか、とにかく「押すことが何らかの危険を招くもの」であることが殆どだ。


 今回私が押したのも、その例に漏れず危険を招くものであった。尤も先述のそれらとは違い、見た目では判別出来なかったが。

 自分で言うのも何だが、正直「不運」としか言いようが無い。あんな、ほんの僅かな気紛れが、と。


       ◇


 その日は、妙に朝が寒かった。

 冬だから当然と言えば当然なのだが、それとしても異常と言える程の寒さで、少し向こうの公園では鳩が一切散ることなく団子状に身を寄せ合っている。その光景はおしくら饅頭と言うより、熱殺蜂球を連想させた。


 そんな日だったから、たまには温かいものでも飲みたいとそう考え、側にあった自販機を見る。

 その見た目は、ごく普通の自販機だった。普通に水やらジュースやら、温かいものならコーヒーやコーンスープが売られている。

 その中から季節感も考えて汁粉を選び、ボタンを押した――もし仮にこの時、押さなければ何かが変わっていたのだろうか。今更だし分かることでは決して無いが、そう思わずにはいられなかった。


 ボタンを押して、出て来たのは奇妙な缶だった。

 少なくとも汁粉では確実に無い。真っ黒な、漆を塗ったような缶で、商品名はおろか原材料すら書かれていない。その見た目は最早不気味などという言葉で片付くものでは無く、形容し難い異物感を覚えさせられる。


 流石に、飲もうなどとは思わなかったが――ほんの好奇心に負け、プルタブを捻り開けてみた。

 当然ながら、中から小豆の香りはしない。どころか完全に無臭であり、僅かな酸素臭すら無いのだ。


 怖くなって、それ以上弄らずゴミ箱に捨てた――中身は残っていたが、今回はしょうがないと言っておこう。

 そして直後、悲劇が起きた。

 ゴミ箱の中に入ったそれが突如黒い煙を吹き出し、周囲を包み始めたのである。

 別に、壊れている訳では無い。追尾するように、黒煙が人を追いかけて行くのだ。


 ……周囲が皆、すぅと煙に飲まれて行く。そうすると、困惑の声が突然ふっと消えてしまった。

 ……何が起きたかも分からないまま、私も黒煙に飲み込まれてしまった――そして、今居るそこには闇しか無かった。

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