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赤い霧

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 数年振りに帰った故郷は、霧に包み込まれていた。

 酷く赤い霧――少し、血の色を連想させる。それがすっぽりとドーム状に、街だけを覆い尽くしているのだ。


 異常事態。そうとしか言い表せないような光景に、思わず呆然と立ち尽くす。

 こんな状態だなどとは、朝のニュースにも出ていなかった。しかしそれから昼前の今までに広がったものと考えるには、あまりに規模が広大過ぎる。


 ……隠されていた、ということだろうか。

 別に陰謀論者のつもりは無いが、これを見ると流石にそう意識してしまう――が、良く考えてみればその想像に大きな穴があると気付いた。


 ()()()()()。ここに着くまでただの一度も、異変らしい異変が他に全く無かったのだ。

 隠したいのなら通行止めなり何なり、ここに到着させない方法は幾らでも有った筈だろう。だと言うのにここに至るまでには、そんなものなど一つも無かった。


 つまり、隠した訳では無く――本当に、全く認知されていないということか。それはそれでかなりおかしい気もするが、そうとしか考えようが無い。


 そんなことを考えていると、真横を一台の車が猛スピードで通り抜けた。

 白い……何と言うか、高そうな車だ。エンブレムを見た感じ、多分外車というやつだろうか。それがバイクかと言いたくなる程派手にエンジン音を響かせながら、赤い霧に突入して行った。


 それから数秒、喧しいエンジン音が聞こえていたが。

 不意に、その音がぱっと消えた。

 止まったとか遠ざかって行ったように、緩やかに消えていった訳では無い。本当にぱっと、テレビの電源を落としたみたいに、ふっといきなり消失したのだ。


 そう気付いた瞬間に、車を発進させていた。街にでは無く、逆方向に。

 異常現象に対するほんの僅かな興味とか、中に居る家族は無事かとか、そんなごちゃごちゃした思考は一瞬でクリアになって。ただ逃げなければと、生存本能が意識の全てを支配した。


 ……その後のことは何も知らない。と言うより、いつの間にか記憶の中から薄れていたと言うべきか。

 そも、どうしてあの街に行ったのか――それすらも、今はもう思い出すことが出来なかった。

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