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 こんこん、こんこん。

 夜中にふと目を覚ますと、扉を叩く音が聞こえた。

 真っ暗闇の静かな部屋に、その音はとても煩く響く。正直酷く耳障りで、普段なら無視するのだけれど、今日は思わず怒鳴ってしまった。


「こんな時間に、喧しいぞ!」


 一瞬、しぃんと音が消える。

 諦めたのか、そう思って寝直そうと布団に潜ると、途端にまたあの音がこんこんと聞こえ始めた。


 こんこん、こんこん。

 今度は変に規則的だ。チクタクチクタクという時計の音に合わすような、機械じみて丁寧な音。

 ずっと聞こえ続けていて、やはりどうにも眠れない。良い加減鬱陶しくなって、思わずベッドを抜け出した。


 どたどたと、敢えて足音を立てながら歩く。そうすれば、少しはこちらの怒りも伝わるだろうと思ったのだ。


 こんこん、こんこん。


 けれども思惑は外れたようで、音は一向に止む気配が無い。ちゃんと大声で怒鳴りつければまた少しは止まるのかも知れないが、どうせ懲りないと分かっているやり方を試す気はもう無い。


 ――――がちゃ。怒りを込めて、勢いよく扉を開け放った。そして、怒りのこもった声で叫ぶ。


「さっきから、何なんだ!」


 しかし、その怒声は空振りで。扉の外には、全く誰も居なかった。

 逃げ去ったのかと思ったが、玄関口の落ち葉がまるで乱れていない。もしも走ったりなどすれば、確実に散らかる筈なのに。


 もしや、風の音をずっと気にしていたのだろうか。そう考えると怒鳴り散らした自分の姿が途端に恥ずかしく思えて、慌てて扉を閉め直した。

 全く、無駄な時間を過ごした。呆れながら鍵をかけ、ベッドに戻って横たわる。


 こんこん、こんこん。

 また、同じ音が聞こえて来た。けれど流石に、そう何度も引っ掛かりはしない。

 耳栓代わりにヘッドホンを耳に当て、改めてすうと目を閉じる。そうすると、とても心地良く安眠出来た。


 ……最後の音が外では無く、真下から聞こえたことについては。先入観とでも言うのか、全く気付くことなど無かった。

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