表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/200

透き通る病

投稿しました!

良ければ評価、感想よろしくお願いします!

 この世界で僕だけが、水彩絵具でできている。

 

 ――それは、奇妙な病だった。

 水に触れると、身体の色が溶け落ちる。時間が経てば戻る、と言うものでもなく、塗り直さない限りはその部分が元に戻ることはない。


 生きる分には、何ら労のない病である。消えたままだとこの世界から存在自体が消えて無くなるなどと言う漫画のような展開もなければ、身体的な負荷が掛かるような症状がある訳でもない。ただ肉体が透けて、周囲から認識できなくなるだけだ。まぁだからと言って、役に立つかと問われればそうでもない訳だが。


 ある医者曰く、この病は相当珍妙なものらしい。これまでに同じ病を発症した人間は、世界の歴史を見ても僕を含めて二桁行くか行かないかだと言っていた。

 

 この病の話を聞いた人間の反応は、大きく分けて二種類である。男と女で分かれる、と言った方が正しいか。

 男ならば「羨ましい」と言う。

 女ならば一歩下がって苦笑いをする。

 言いたいことは分かるのだが、こちらとしては濡れ衣も良いところだ。明言しておくが僕は、そんな下卑た行為にこの病を利用したことは一度もない。


 ……まぁ、それはともかく。

 何が言いたいかと言えば、透明人間などそう楽しいものでもないと言うことだ。

 特段、目立って人の役に立つものでもなければ自分の助けになるものでもない。人間の想像の範疇で可能な行為と言えばせいぜい覗きやらカンニングやらの下卑た行為くらいだし、更に言えばやっていなくてもそれを疑われるのだからデメリットでさえある。

 透明人間とは、そんな「面倒臭い」存在だ。


 ……生まれながらにして「面倒臭い人生」が確約されている。正直割と絶望的だが、それを理由に将来を悲観する気にはなれなかった。

 「だって」なんて、続く言葉はない。要するに「なんとなく」だ。

 まぁ、面倒臭いのは嫌だがそれはそれなりに生きてみよう。案外、面白いことがあるかも知れない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ