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少女の遺言【中編】

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「……ご馳走様」


 くしゃりと袋を握り潰し、少年は小さく呟いた。

 あれから数分。「話し相手になって」と言って来た少女は特に何を話すでも無く、ただ食事をする少年の横顔をぼんやりと眺め続けていた。


 食事は終わり、ここに居る理由も無くなった。なので別に、もう立ち去っても良かったのだが――ほんの僅かな好奇心で、彼は少女に問い掛けた。


「……お前、何で死のうと思ったんだ?」


 聞かれて、少女は何故か驚いたような表情を浮かべて硬直する。此処で何故その顔が出来るんだ、なんてことを思いつつ、少年は彼女の言葉を待った。


「……ふふ」


 そして数秒後、硬直が解けた少女は面白そうに笑いを溢した。 


「何で笑うんだ?」

「聞かれると思ってなかったから」

「身の上話でも聞かされるのかと思ってたら、何も話されなかったからな。別に興味が無いことでも、肩透かしを食らったら嫌でも興味が湧くものだろ」

「実は……やっぱいいや、みたいな感じ?」

「それだ」


 確かにそうだね、なんて言いながら少女は笑う。話しながらよく笑うその姿を見ていると、自殺しようとしていた姿がまるで嘘かのように思えた。

 構ってちゃんの演技か、と一瞬疑ったが、それなら場所があまりにも悪い。彼が来なければ誰も来なかったような場所でそんなことをしたところで、注目を集めるという目的は果たせないだろう。まして彼女が立っていた校舎裏側では、注目を浴びることは殆ど不可能に近い。


 ならば、やはり本気だったのだろう――しかし何故、そう思っていると、少女が静かに口を開く。


「……大した理由じゃ、無いんだけどね。多分、君が聞いたら「そんなことで」って言うと思うよ」

「そんなこと――――」


 言わない、と少年は答えた。

 どんな理由であれ、人の死にたがる理由が笑ったり否定されていい筈がない。死ぬのは個人の自由だと思っている彼だが、流石にそのぐらいの良識は持ち合わせている。


「じゃあ、賭けよっか」


 その答えに対し、穏やかな顔で少女は言った。


「君が呆れなかったら、私は自殺するのを止める。でも呆れたら、私はちゃんと自殺するよ」


                   〈続く〉

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