表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
163/200

白夜

投稿しました!

良ければ評価、感想よろしくお願いします!

 白い、白い、夜だった。

 吹雪いている、とか霧深い、とかそういった意味での白さではない。

 異様に眩しい――白熱灯の光を直接網膜に当てられているような、そんな明るい白だった。


 あの日の夜の光景は、今も記憶に焼き付いている。自分個人のものではなく、人という世界の記憶にだ。

 あの夜のことを、世間では「白夜」なんて呼ぶ。世界が真っ白になった夜だがら白夜――その名前が世間に定着した所為で、元々そう呼ばれていた日の沈まない夜は勝手に改名させられてしまった。


 それ程の影響力を持つ現象、当然ながら「光っただけで、特に何も起きなかった」なんて好都合な話はない。

 あの夜――地球という名のこの星は、とても静かに沈黙した。はっきり言えば地球は死んだ。

 「木々が枯れ、水が腐って猛毒になった」なんて、分かり易く死の星になった訳ではない。

 ただ、人のように。当然の如く、生命活動を終えたのだ。正しく言うなら「星が産むことを止めた」。


 獣は生殖機能を失い、植物は種を作らなくなり、微生物は増殖をしなくなった。それによって進化も、退化も、継承も――「未来」という名の全てが、星から消えてしまったのだ。


 現状、世界に変わりはない。当たり前に獣が生きて、当たり前に木々が地に根を張っている。

 ただ、そんな「当たり前」に生命が息づくこの星は、事実既に死んでいる。恐らくはそう遠からず、この星は人が空想する通りの「死の星」へと変貌を遂げるだろう。

 「増えない」とは、まさにそういうことなのだ。次に繋がず、ただ個体として消えゆくだけの存在など、生きていると言うことは出来ない。


 ……未来の存在しないこの星で、生物は星と共に死んでいる。だが、そう思っているのは我々生物だけかも知れない。

 願わくば――死んだ地球(あなた)が我々を忘れ、いつか蘇りますように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ