白夜
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白い、白い、夜だった。
吹雪いている、とか霧深い、とかそういった意味での白さではない。
異様に眩しい――白熱灯の光を直接網膜に当てられているような、そんな明るい白だった。
あの日の夜の光景は、今も記憶に焼き付いている。自分個人のものではなく、人という世界の記憶にだ。
あの夜のことを、世間では「白夜」なんて呼ぶ。世界が真っ白になった夜だがら白夜――その名前が世間に定着した所為で、元々そう呼ばれていた日の沈まない夜は勝手に改名させられてしまった。
それ程の影響力を持つ現象、当然ながら「光っただけで、特に何も起きなかった」なんて好都合な話はない。
あの夜――地球という名のこの星は、とても静かに沈黙した。はっきり言えば地球は死んだ。
「木々が枯れ、水が腐って猛毒になった」なんて、分かり易く死の星になった訳ではない。
ただ、人のように。当然の如く、生命活動を終えたのだ。正しく言うなら「星が産むことを止めた」。
獣は生殖機能を失い、植物は種を作らなくなり、微生物は増殖をしなくなった。それによって進化も、退化も、継承も――「未来」という名の全てが、星から消えてしまったのだ。
現状、世界に変わりはない。当たり前に獣が生きて、当たり前に木々が地に根を張っている。
ただ、そんな「当たり前」に生命が息づくこの星は、事実既に死んでいる。恐らくはそう遠からず、この星は人が空想する通りの「死の星」へと変貌を遂げるだろう。
「増えない」とは、まさにそういうことなのだ。次に繋がず、ただ個体として消えゆくだけの存在など、生きていると言うことは出来ない。
……未来の存在しないこの星で、生物は星と共に死んでいる。だが、そう思っているのは我々生物だけかも知れない。
願わくば――死んだ地球が我々を忘れ、いつか蘇りますように。




