よろしく、ハロー
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「初めまして、この世界のお兄さん。私はハロー、異なる世界から来ました」
夢でも見ているのか――男は腰を抜かしたまま、目の前に立つ少年を見つめた。
見た目は十三、四歳の少年だ。額にアンテナがついていたり肌が緑だったりもしない、ごく普通の少年らしい姿をしている。強いて特徴的な部分を挙げるなら、何処かの漫画に出てきそうなくらい衣服が独特なところか。
それだけなら「厨二病の子供」で片付けただろうが、そう出来ないのは彼の背後に見えるものの所為である。
それは、奇妙な「孔」だった。それは太陽のような、けれど直視しても目が潰れる気配など微塵も無いという奇妙な白光を放っており、向こう側は全く見えない。
そんなものの中から出てきた少年を、普通の人間として扱えと言うのは――はっきり言って、不可能というものだろう。
「もしもしお兄さん、聞こえていますか?」
呆然としていると、ハローと名乗った少年が不思議そうな表情で語りかけて来た。
「おかしいな、この世界では名乗ったら名乗り返すことで「挨拶」というコミュニケーションを成立させると聞いたのですが……間違っていたのでしょうか」
その姿を見て、なんとなく。
直前まで頭の中に浮かんでいた「逃げる」という選択肢が、ふっと消えたような気がした。
彼の根底が、基本善性だからだろうか。彼はこの瞬間、コミュニケーションを取ろうとする相手を無碍にすることに罪悪感を覚えてしまったのだ。
「いや……間違ってない。ちょっと驚いて、放心してた」
「ああ、そうだったんですか。そうですね、良く考えれば分かることでした。
こちらに「世界渡り」の技術が無いことは、既に分かっていた筈なのに。興奮して、貴方の困惑を考慮していませんでした……大変、申し訳ありません」
「いや、良いよ。それで、名前か。僕は田代雅臣だよ」
「タシロマサオミさん……覚えました。よろしくお願いします、マサオミさん」
「うん……よろしく、ハロー」
……「よろしく」と「ハロー」。その言葉の並びに微かな違和感を覚えつつ、雅臣はハローと握手を交わす。
この出会いは後に、ある事件を引き起こすのだが――それはまた、別の話だ。




