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魔女と猫

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 魔女は孤独であった。

 世界に一人の魔法使い。人智を超えた存在を受け入れる者は、人間であることを許されなかった。

 古くは「魔女狩り」などと呼ばれる蛮行。現代に於いても姿を変え、人の世に残る狂気。


 ――異端の排除。


 人の臆病、そして妄想。それは時として、強く攻撃性を掻き立てるものだ。

 人は元来、知らぬことを恐れる生き物である。だとすれば「己に無い力を振るう存在」はまさに、恐怖すべき怪物と言えよう。


 そうして孤独になった魔女はある日、不思議な出会いを経験した。

 深い夜の話である。窓を叩く風が奇妙に煩いことに辟易した彼女が窓を開けると、夜闇の一部がゆらりと蠢いて部屋に飛び込んできたのだ。

 何事かと思い目を向けると、そこでは一匹の黒猫が静かに魔女を見据えていた。

 ……いや、「黒猫」と言う表現は少々正しくないだろう。

 敢えて言うのならばそれは、まさに「夜のような」姿をした猫だった。

 黒紺の体毛が蝋燭の光を受けてちらちらと煌めく様は星空を彷彿とさせるし、右側だけで煌々と輝く金色の瞳はまるで月光を表しているかのようだ。

「…………にゃあ」

 見惚れる魔女の前で、猫はひとつ小さく鳴いた。

 瞬間、蝋燭が消えて世界は夜に包まれる。突如襲った深い暗闇は魔女に孤独を思い出させたが、不思議と恐怖は感じなかった。


 ……数分か、或いは数時間か。どのくらい経ったのかも分からないが、不意に蝋燭の灯りが点いた。

 猫はもう、どこにも居ない。その代わり、小さな光が魔女の周りをゆらりゆらりと踊っている。

 光に誘われるように、孤独な魔女は空へと飛び立つ。そうして二度と、そこには帰って来なかったそうな。


 ――一説にはその後、魔女は星になったとか。人の世で孤独に生きるよりは、そちらの方が幸せだったのかも知れないね。

 ……さて、この物語はこれにてお終い。いやあ、話してみれば案外覚えているものだね。この話を聞いたのは、随分昔のことだって言うのに。


 ――え?誰に聞いたかって?それは……内緒、ってことにしておこうかな。

 だって物語なんて、嘘の方が面白いものだろう?

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