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終わりの夢

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 懐かしい――ような気がする、夢を見た。

 錆び付いてぼろぼろになった遊具と、枯れて最早一片の青葉すら付けなくなった木々。そこで幼い2人の子供が、駆け回って遊んでいる。


 幼子は、見覚えの無い顔だった。

 どちらかが自分という訳でも無く、古い友人という訳でも無い――それなのに、不思議ととても懐かしい。

 忘れているのかとも思ったが、そういう訳でも無いようだった。

 そうと断言できるのは、今この夢の中において――恐らく起きたら忘れてしまうのだろうが――何故か、生まれた瞬間のことすら記憶にあるからだ。


 幼児期健忘、というものがある。これは幼児期の記憶が自然と消えていくというものであり、私自身も例に漏れず当時のことを忘却していた。

 しかし、ここが夢の中だからか。忘れ去っていた当時の映像が、まるで昨日のことのように頭の中に浮かぶのだ。

 何とも奇妙な感覚で、正直微妙な気分ではある――が、そのお陰で眼前の光景が自分のものでは無いと断言することができた。まぁ、それに意味があるのかどうかは判断に困る所だが。


 自分の記憶では無い。ならばこの牧歌的な、幸福な子供達の記憶は――一体、何処の誰のものなのだろう。それを理解したところで、所詮は夢。起きれば忘れるようなものに、意味があるとは思えない。

 だが、まぁ。少なくともこの世界の中で、それに興味を持つ以外やることが無いのも事実なのだ――ならば、考えてみるのも一興だろう。


 とは言え、さして突出した知識も想像力も無い自分に出せる答えなどたかが知れている――と言うより、一つしか思い浮かばない。

 前世。それが一番「それらしい」答えだと思う。

 生まれた瞬間まで思い出したことも、それなら説明が付くだろう。この映像は、それより前の記憶なのだと。


 ……しかし、それはそれで悲惨なものだ。

 「生まれる前の記憶」が、幼い子供が遊ぶ記憶。それは即ち、この子はこの後死ぬと言うことで――この笑顔も、直後に失われるのだろう。


 あくまで想像に過ぎない。違う可能性もあるだろう。

 だが――もし、この想像が正しかったなら。そうであったならば、せめて――この子の最期が、安らかであったことを願う。


 この子の為ではない、死に恐怖しながら今を生きる自分自身の願いとして。

 ――――残酷な死など、経験したくはないものだから。

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