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一寸先は

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 そこは、ひたすら真白い場所だった。

 「一寸先は闇」という諺がある。感覚的にはあれと似たようなものだと思うが、今私の一寸先を覆っているのは闇などでは無く白い雪煙だ。


 何とも、奇妙な場所である。

 街に近い雪山の、整備された登山道を登っていたつもりだったのだが――この場所をどう見たところで、人の手が加えられているようには全く以て思えない。


「もし、そこの人」


 途方に暮れていると、不意に声を掛けられた。見るとそこには、1人の女性が佇んでいる。

 すぐ近くにいる彼女に気付けなかったのは、恐らく彼女の着ている服が全て雪色な所為だろう。

 ダウンも、ズボンも、靴や手袋も、全てが狙い澄ましたかのような白。服装が現代的で無ければ、雪女を疑っただろう――尤も私はオカルトを信じていないので、ただ疑って終わりだったとも思うが。


「もしや、遭難したのですか」

「ええ、そうなんですよ」

「……ふふっ」


 理由は無いが余裕がある風に見せたくて、くだらない洒落で返答する。それを聞いて微かに笑った彼女の顔を見た瞬間、冷えた身体が少し熱を持った気がした。


「すぐそこに小屋があります。一旦そちらに避難しましょう」


 促され、私は彼女に従った。もしもこの時、従わなければ運命は変わったのだろうか――なんて、今更考えたところで無駄でしか無いだろう。


 促されて入った小屋は、何かの倉庫のようだった。

 随分人の出入りが無いのか、中のものはどれも埃を被っている。天井には蜘蛛の巣が張っている――が、巣の主は凍って吊り下がっていた。


 瞬間的に悟ったのは、それを見てしまったからか。或いは入った小屋の中が、外より冷えたからかも知れない。


「……馬鹿な人。いや、不運な人と言うべきかしらね」


 静かに響いた声と同時に、視界がふっと黒く染まる。

 ああ、これは本当に「一寸先は闇」だ――そんな直近過ぎる連想を最後に、私の身体はシンと冷たく冷えていった。

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