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誰が為の野望

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「結局さ、彼は何がしたかったのかな」


 魔王との戦いが終わり、丁度二十年が経った日。久々に当時の仲間が集った酒の席で、賢者が不意にそうこぼした。


「何って……何の話だよ」


 戦士が尋ねる。賢者は考え込むような表情のまま、その問いかけに返答した。


「だからさ、魔王が。彼は世界を恐怖に陥れてまで、一体何がしたかったのかと思ってさ」

「それは……戦う前、奴が自分で言ってたじゃないか。

 世界征服。それが、奴の目的だろ?」


 呆れ気味に勇者が答えると、賢者は「まさにそこさ」と勇者のことを指差して、どこか悩むようにしながら考えを口に出し始めた。


「世界征服。支配欲……或いは物欲か、そう言った欲望の果てにある野望がそれになると僕は考えている。

 でも、そう思うと不思議なんだよ。彼は「世界を我が手中に」と言ってはいたけど、そんな欲深な奴にしては魔王城の作りが妙に質素だった。いや、一国の要としての豪華さはあったけど……無駄に華美だったりはしなかった、って話。

 だから、物欲では無いし……それに、支配欲が目的なら侵略した地域の住民を全滅させたりする必要はないと思う。寧ろ、支配が目的なら生かす筈だ。だって殺したら、支配する民が居なくなってしまうんだから。

 だとしたら――彼が世界を征服してまでしたかったことって何なんだろう、って考えちゃってね」


 賢者の疑問を聞き、仲間は皆考え込む。しかしそれから数分と経たず、勇者が小さく頷き顔を上げた。


「……それは、考えちゃいけないことだ。

 奴が何を考えていたにせよ、俺たちは奴に勝利したんだ。してしまったんだ。

 その時点で、奴の願いは叶うことのないものになった。だって、俺たちと奴の考えは決して相容れないものだったんだからな。

 なら――考えるべきじゃない。勝者が敗者の未来を憂えることは、敗者に対して最大の侮辱なんだから」


 その言葉で、皆の思案は終わりを迎えた。

 ……彼が、何を願ったのか。その事実は、彼らにとって知る由もないことである。

 例えそれが、たった一人を救う為であったとして――その願いを奪い去った者に、それを叶える権利など有りはしないのだから。

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