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白霧の朝

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 遠くで、雉鳩が鳴いていた。

 特徴的な声――鳩なのに何処か梟を想起させるようなホゥホゥという鳴き声が、朝靄の中に響き渡る。


 その声に風情を感じるには、今の私はあまりに無粋と言えるだろう。何しろ服は寝巻きのままで、片手には薄らと悪臭を放つ可燃ごみをぶら下げているのだから。

 だが、この声を聞く環境として私の姿はある意味最も正しいのではないかとも思う。何故ならこの声は山や森のような自然より、日常らしく鉄臭い都市的な空気の中にこそ響くものなのだから。


 ならば無粋と言うのも確かでは無く、実際には私の姿も含めて粋と呼ぶべき――と言うのは、流石に無理が過ぎるだろうか。

 ……まぁ、くだらない妄言である。私は小さく自嘲して、ごみ袋をごみ置き場に下ろした。

 その後、普段なら家に戻って二度寝でもする所だが。この日はなんとなく声に気を惹かれたこともあり、ふらりと早朝の街の散歩に出かけた。


 歩いてみると、早朝の街はいやに寒い。季節的には寒い時期でも無い筈だし、スマホで確認しても然程気温が低くもないが不思議と寒く感じられる。

 それから、なんとなく白い。別に霧が出ていたりもしないのだが、不思議と空気が薄ら白んでいるような気がする。その光景はどこか不気味であると同時に、昼夜の光景と比べて僅かに美しいような気もした。


 冷えて白んだ空気の中、雉鳩の鳴き声を聞きながら呆然と街を歩いていく。空気感故か一つ句でも詠んでみようかと考えてしまったが、碌な単語が浮かばなかったのでその考えはあっさりと消えた。


 結局、何をするでもなくただ歩いて街を一周するだけの散歩に終わった。

 家に戻った時にはそろそろ良い時間と言った所で、私は準備を整える為家に入る。その寸前、遠くから雉鳩の声が聞こえた。


 ……何故だろうか。私には、その声が。


 少し、楽しげに感じられた――――

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