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禊ぐ境界【後編】

皆様、新年明けましておめでとうございます。

今日は新年ということで特別、この時間の投稿とさせていただきます。

寝る前の一作として、或いは初日の出前の眠たい時間の時間潰しに良ければご活用ください。

 鐘が鳴り、年が明けた。

 私は境界線を越え、清き今に立っている――と、そう思っていたのだが。不思議と今、私の心は清くどころか汚れているように感じられる。


 罪を禊げなかったのか。否、他者にとって私の結論が如何なものであったとして、私という個人にとってのそれは既に清められたものである。

 ならば、何故。私の心は未だ、こんなにも汚れ果てているのだろうか。


 分からない――けれど、確かなことが一つある。

 それは、私には未だ罪があるということだ。

 罪悪感は何処にも無い。けれど、罪は確かに此処に在る。

 予想した通り、この汚れは払えるものでは無かったのか。否、そも罪と言うものがただの汚れと同一だと認識していたこと自体が間違いだったのかも知れぬ。


 「禊」も「償い」も、自己満足に過ぎないもので。一度犯し魂にへばり付いたそれは、魂を汚したのではなく染め上げたのでは無いだろうか。事ここに至り、私はそのように考えた。


 そうで無ければ、私の心が未だ汚れていることに一切の説明が付かない。そうで無ければ、私がこんなにも悪しきままで在る筈がない。

 冷たい雨に打たれながら、私は呆然と目の前にある光景を見つめた。


 歪んでいる。穢れている。否、汚れている。

 ぬるりとした赤いそれは異様な程に気持ち悪く、奇妙な程に悍ましい。

 この風景は、ある意味一つの証明だ。私という人間が何より穢れ、汚れているという事実の。


 そうでないことを望みながら。


 問うまでもなくそうであった。


 笑いさえ溢れる。悪辣で、醜悪で、最悪だ。

 流されていく。へばり付いた汚れが、私自身の生まれ持った穢れが。

 きっと、私はまた忘れるのだろう。そして、またこの日を私は待ち侘びる。


 雨では洗い流せないこの穢れを。ただの、払える汚れだと。


 この境界が――全て、禊いでくれるのだと信じながら。


                  〈終〉

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