禊ぐ境界【中編】
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……さて、どこから語るべきだろうか――と、悩むようなことを言いつつも、こういう時の相場が出会いからであることは既に理解している。
とは言え、それも然程覚えていない。まぁ、うろ覚えなりに語って行こうか。
私が彼と出会ったのは、確か年が明けてすぐだったと思う。何の繋がりだったかは忘れたが、何かしらの交流がそれ以前にもあったことは間違いない。
それ故か、顔を合わせるのが初とは思えない程に私達は気が合った。恐らくだが、側から見ていれば十年は付き合いのある友人同士に見えたのでは無いだろうか。
それからは……まぁ、平均的な友人同士らしい付き合いが続いた。「友人らしい」というものの認識が、私と世間で食い違っていなければの話だが。
……そして、あの雨の日。私は、彼を殺した。
思い返してみても、その展開は唐突だった。
前触れらしい前触れも無く――と言うよりも、その直前直後の記憶が酷く曖昧だ。それこそ、出会いや友人付き合いなどが全く比では無い程に。
そも、理由があったのか無かったのか。曖昧なのでは無く、ただ自然体としての行動だった可能性もある。
自分が呼吸する瞬間を、いちいち記憶しない様に。自分にとってその行為が、それ程までに当然だった可能性も。
……参った、分からない。
せめて「酷い裏切りを受けた」とか「大切なものを奪われた」とか、理由があればよかったのだが。果たして、結果はこの有様だ。
まぁ、良い――いや、ある意味ではこの結果だけで十分と言えるのかも知れない。
己の罪が「払えないもの」と確信するよりは。「分からない」なら、勝手に「払える」と結論付けができるのでは無いだろうか。そう思えば、幾分気持ちが楽になる。
それに、人に語り聞かせているのだ――「重荷を下ろせた」と言う意味でなら、払えたと言って良いだろう。
……もう時期、年が明ける。
ここまで聞いてくれた者、有難う。君らのお陰で、私は罪を払うことができた。
これで私は、境界線を越えられる。
――――罪ある者は通れない、年と言う名の境界線を。
〈続く〉




