表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
142/200

私が私を許せる日

投稿しました!

良ければ評価、感想よろしくお願いします!

 部屋の整理をしていた時、ふとあるものに目が留まった。

 ぼろぼろになった写真立て。その中では、久しく会っていない友人達が楽しそうに笑っている。


 もう、あれから何年経ったのだろう。彼らと過ごしたあの日々が鮮烈過ぎた所為か、それ以降の時の流れがいまいち分からなくなってしまった。

 懐かしい――事実そうなのかも分からないままにそう感じて、思わず写真立てに触れる。


 ざらりとした感触の先で誰より楽しげに笑っているのは、自分の親友だった青年だ。真っ先にそこへ手が伸びたのは、きっとまだ未練が残っているからだろう。

 

 ……親友。そう、あり続けたかった関係。

 壊したのは自分自身なのに――今でもそこに縛られたまま、動けていない自分が居る。

 友情というものは、地を掘削するようなものだ。心という地を掘り進み、深く刻み付けていく。

 けれど、掘り過ぎてはいけない。調子に乗って掘り過ぎて仕舞えば、掘り当ててはいけない層にぶつかる。


 ……私は、掘り過ぎてしまったのだ。

 深く、深く、刻み過ぎてしまったのだ。その所為で、私は――掘り当てるべきでは無い気持ちを、この手で掘り起こしてしまったのだ。


 もしも、あの時。掘り起こしたりしなければ――或いは、掘り起こしてしまったことを彼に伝えたりしなければ。今は、もう少し変わっていたのだろうか。

 ……いや、変わらないだろうな。彼はきっと私の想いを知らずとも、あの行動に出ていただろう。


 彼はまさしく英雄だった。他者の為、自分を投げ捨てることを決して厭わない青年だった。彼がそういう人間である限り、あの出来事は変わらないだろう。

 

 私を庇って死んだ彼。私の為に死んだ彼。

 死んでほしくなどなかった――けれど私を救わずとも、彼は遠からず死んでいた。そういう存在として、この世に生を受けたのだろうから。


 それを理解していても、未だ悔恨の念は消えない。恐らくは、私が自分を許せないから。

 ……ああ、でも、もうすぐ、私は自分を許せるようになるかも知れない。


 彼に会って、直接許しを貰えたら――きっと、私は自分を許せるだろう。遠からぬその日に想いを馳せながら、私は身辺の整理を再開した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ