私が私を許せる日
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部屋の整理をしていた時、ふとあるものに目が留まった。
ぼろぼろになった写真立て。その中では、久しく会っていない友人達が楽しそうに笑っている。
もう、あれから何年経ったのだろう。彼らと過ごしたあの日々が鮮烈過ぎた所為か、それ以降の時の流れがいまいち分からなくなってしまった。
懐かしい――事実そうなのかも分からないままにそう感じて、思わず写真立てに触れる。
ざらりとした感触の先で誰より楽しげに笑っているのは、自分の親友だった青年だ。真っ先にそこへ手が伸びたのは、きっとまだ未練が残っているからだろう。
……親友。そう、あり続けたかった関係。
壊したのは自分自身なのに――今でもそこに縛られたまま、動けていない自分が居る。
友情というものは、地を掘削するようなものだ。心という地を掘り進み、深く刻み付けていく。
けれど、掘り過ぎてはいけない。調子に乗って掘り過ぎて仕舞えば、掘り当ててはいけない層にぶつかる。
……私は、掘り過ぎてしまったのだ。
深く、深く、刻み過ぎてしまったのだ。その所為で、私は――掘り当てるべきでは無い気持ちを、この手で掘り起こしてしまったのだ。
もしも、あの時。掘り起こしたりしなければ――或いは、掘り起こしてしまったことを彼に伝えたりしなければ。今は、もう少し変わっていたのだろうか。
……いや、変わらないだろうな。彼はきっと私の想いを知らずとも、あの行動に出ていただろう。
彼はまさしく英雄だった。他者の為、自分を投げ捨てることを決して厭わない青年だった。彼がそういう人間である限り、あの出来事は変わらないだろう。
私を庇って死んだ彼。私の為に死んだ彼。
死んでほしくなどなかった――けれど私を救わずとも、彼は遠からず死んでいた。そういう存在として、この世に生を受けたのだろうから。
それを理解していても、未だ悔恨の念は消えない。恐らくは、私が自分を許せないから。
……ああ、でも、もうすぐ、私は自分を許せるようになるかも知れない。
彼に会って、直接許しを貰えたら――きっと、私は自分を許せるだろう。遠からぬその日に想いを馳せながら、私は身辺の整理を再開した。




