表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
140/200

どうか天使であれ

投稿しました!

良ければ評価、感想よろしくお願いします!

 私という存在を一言で表すなら、「いつの間にかそこに在った」と表現するのが最も正しい。

 雲の遥か上、けれど宇宙ではなく只の空――そんな、不思議な場所で私は生まれた。


 人が呼ぶなら「天使」だろうか。彼らの空想するそれと同様に翼を持ち、光輪を頭上に浮かべてはいるが、そうと肯定することは出来かねる。

 そも「使い」を名乗ろうにも、私は私を使うものを見たことがない。人が神と呼ぶそれが、この世に存在するものかどうか、私でさえも知らないのだ。


 ……それは恐らく、私以外の者達も同様だろう。けれど彼らは自分を使うものを信じ、人が語る天使のような役割を自らの意思で行っている。「使い」を名乗るのに己の身体を己で使う――と言うのは、私にはどうも本末転倒なように思えてしまう。


 まぁ、ここまでで理解して貰えたかとは思うが。私は所謂「天使」の役割に消極的だった。

 誰に言われた訳でもなく、それが存在理由であるかも知らず――ただ「姿が似ている」と言うだけで自分達という存在を確定し、勝手に決めた役割を遂行する。それが正しいとは、どうにも思えなかったのだ。


 過去形なのは、今の私の行動がその思想と矛盾しているからである。

 私は一人の少女の魂を、私達の世界へ導こうとしていた。その行動に理由と呼べるものがあるとするなら、それはある種の同情心だろう。


 彼女は、酷く哀れな子供だった。

 親、兄弟、他人――あらゆる相手に冷遇され、存在していないかのように扱われ孤独に死んでいった少女。そんな彼女の人生を見下ろしていた私は、思わず考えてしまったのだ。


 ――――「こんな終わりで良いのか」、と。

 「生き抜いた」と言うには、あまりに空虚な人生。そんな彼女の人生に、一度くらいの「やり直し」があっても良いと思うのは、何か間違っているのだろうか。


 分からない。自分の行為が正しいのか、それとも間違っているのか。

 ……ただ、少なくとも。

 彼女の人生を思い返せば、信じる価値くらいはあっても良いのかも知れない――そう思い、願ってしまったことだけは、紛れも無い事実である。


 ――――どうか天使であれ、と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ