どうか天使であれ
投稿しました!
良ければ評価、感想よろしくお願いします!
私という存在を一言で表すなら、「いつの間にかそこに在った」と表現するのが最も正しい。
雲の遥か上、けれど宇宙ではなく只の空――そんな、不思議な場所で私は生まれた。
人が呼ぶなら「天使」だろうか。彼らの空想するそれと同様に翼を持ち、光輪を頭上に浮かべてはいるが、そうと肯定することは出来かねる。
そも「使い」を名乗ろうにも、私は私を使うものを見たことがない。人が神と呼ぶそれが、この世に存在するものかどうか、私でさえも知らないのだ。
……それは恐らく、私以外の者達も同様だろう。けれど彼らは自分を使うものを信じ、人が語る天使のような役割を自らの意思で行っている。「使い」を名乗るのに己の身体を己で使う――と言うのは、私にはどうも本末転倒なように思えてしまう。
まぁ、ここまでで理解して貰えたかとは思うが。私は所謂「天使」の役割に消極的だった。
誰に言われた訳でもなく、それが存在理由であるかも知らず――ただ「姿が似ている」と言うだけで自分達という存在を確定し、勝手に決めた役割を遂行する。それが正しいとは、どうにも思えなかったのだ。
過去形なのは、今の私の行動がその思想と矛盾しているからである。
私は一人の少女の魂を、私達の世界へ導こうとしていた。その行動に理由と呼べるものがあるとするなら、それはある種の同情心だろう。
彼女は、酷く哀れな子供だった。
親、兄弟、他人――あらゆる相手に冷遇され、存在していないかのように扱われ孤独に死んでいった少女。そんな彼女の人生を見下ろしていた私は、思わず考えてしまったのだ。
――――「こんな終わりで良いのか」、と。
「生き抜いた」と言うには、あまりに空虚な人生。そんな彼女の人生に、一度くらいの「やり直し」があっても良いと思うのは、何か間違っているのだろうか。
分からない。自分の行為が正しいのか、それとも間違っているのか。
……ただ、少なくとも。
彼女の人生を思い返せば、信じる価値くらいはあっても良いのかも知れない――そう思い、願ってしまったことだけは、紛れも無い事実である。
――――どうか天使であれ、と。




