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真夏の呼び声

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 呆れ返る程晴れ渡った、ある夏の日のことだった。

 あまりに暑くて家に引き篭もっていた私は両親に買い物を言いつけられ、炎天下の中十数分も歩かされる羽目になってしまっていた。


 あの日は、割と本気で自分の血縁者に生まれて初めての殺意を抱いたものだが――まぁ、それはさておき。

 ただ買い物をして帰る、と言うのも癪だった私は近所のコンビニに立ち寄り、これくらいは許されるだろうとお釣りでアイスを一つだけ買った。


 そうして、冷えたアイスを食べながら炎天下を早足に歩いていた時……ふと、遠くから何かが聞こえた。否、正確に聞こえた訳では無いから「ような気がした」と言う方が幾分正しいかも知れない。


 初めは暑さ故の幻聴かと考えていたが、時が経つにつれそれが幻聴でないことは明白になった。

 恐らくは、幼い子供のような声。誘うようなその声は奇妙な程に無感情で、背筋が冷えて凍り付く程の不気味さなのに自然と身体が引っ張られる。


 声に近付くにつれ、笑う声も聞こえて来たが――それもまた、人の笑う声とは思えない程に無感情だ。少なくとも、笑っている人間の声では確実に無い。

 どちらかと言えば、悲苦。悲しみ苦しみ呻くような、けれど孤独とは異なるような――そんな、何処か曖昧な声。


 引かれるまま辿り着いたのは、ごく平凡な公園だった。

 まさに「子供が遊ぶ公園」を体現したような形の場所で、派手なアトラクションなど一つも無い。あるのは小さな滑り台と、これまた小さなブランコだけだ。恐らく今の私が使用しようとすれば、どちらでも確実に尻が抜けなくなるだろう。


 公園ては幾人かの子供が騒いでいたが、聞く限り声の主は居ないように思えた。

 安堵なのか、困惑なのか――中途半端な感情のまま、私はその場を立ち去った。


 ……果たして、誰に呼ばれたのだろう。それは、今になってさえ分かっていない。

 ただ、恐らく――ある種の想起だったのでは、と私は考えているのだ。


 記憶には無い、だが不思議と。


 その声が――酷く、懐かしいような気がしたから。

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