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雨中にて

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 その日は、強い雨が降っていた。

 まさに「土砂降り」とでも言うべき有様で、「雨垂れ岩を穿つ」などと言うが、これなら一晩でアスファルトの地面を穿てるのではないかと思ってしまう程だ。


 私はそんな天気の中、一人街を歩いていた。

 特段、理由があった訳ではない――敢えて言うなら、台風の日に子供がはしゃぐようなものだ。

 自分でも少し歳に不相応な行為だとは思うが、生まれ持った好奇心には逆らえない。


 雨に呑まれた街は知らない街であるかのようで、軽く冒険をしているような気分がする。いつもは素通りする公園も、今日は歩いてみたいと思った。


 ……ふらり、ふらりと歩いていると、不意に僅かな違和感を覚えた。

 何が、という確証は無い。ただ――何か、強い雨の匂いに不純物が混じったような感覚。けれどそんな不純物は、刹那の内に雨に流され消えてしまう。


 気のせい、だったのか――そう考えて、また雨中の散歩を再開する。

 しかし胸の内には、どうにもすっきりしない気持ちがもやもやと渦巻き続けていた。


 後味の悪さ、とでも言うのだろうか。何か、そのままにしておくことを無意識が強烈に拒んでいるような。

 私は違和を捨て切れず、不純物を探し始める。


 ――――もし、未来を知っていたなら。間違いなくしなかったであろう探索を。


       ◇


 ……果たして、私はそれを見つけた。

 泥色の水溜りの中、矢鱈に目立つ赤い色。雨の匂いに混じる、鉄が錆びたような臭い。雨音でさえ掻き消し切れない、狂ったような高笑い。


 ――――そこには、悪魔が立っていた。一つの生命を蹂躙し、その上で笑う怪物が。


「――――ぁ」


 刹那、視界が暗くなる。脳が直視を拒んだのか、絶命したのかは定かではない。

 痛みは無かった。ただ、恐れからか私は叫んだ。


 その声は――雨音に溶け、消えていった。私自身の、存在と共に。

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