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愚か者の復讐譚

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 炎が燃えている。ぱちぱち、ぎゃあぎゃあという二つの音を、身の内側から発しながら。


 不謹慎だが、その様は劇場のように思えた。

 水分が弾ける音は喝采で、悲鳴と断末魔は歓声。そして夜闇を照らす光は、大きなスポットライトのよう。


 この光景を劇の演目とするならば、それは確実に悲劇だろう。そうであることは疑いようがないのだが、不思議と違和感を覚えてしまう自分がいる。


 本作の脚本家は私である。それも突発的に思い付いたものでは無く、入念に構想を練ったものだ。

 私はこれを、悲劇になる前提で作り上げた。けれど、見ている分に悲劇らしい後味の悪さが胸に残ることはなく、寧ろ清々しくさえある。


 恐らくは、この物語が悲劇である以上に「復讐譚」であるからだろう。復讐譚の主人公というものは、見ている分には胸糞の悪いことこの上無いが――成程、それは客観であるのが理由らしい。主観となれば清々しく、同時に心地良いものだ。


 「復讐など虚しいだけ」と、物語ではよく言うが。どうやらそれは、復讐を願う程の憎悪を抱いたことのない者が言う綺麗事であるらしい。

 私が何をされたのか?それは――まぁ、知らない方が良いだろう。まともな人間がそれを聞けば、恐らく精神に異常を来すだろうから。


 ともあれ、だ。私の復讐はこれで成った――が、これで終わりと言うわけにはいかない。

 物語には「結末」が必要だ。それも、悲劇を名乗るならばとびきりのバッドエンドが良い。


 私は水を被る――振りをして、身体に油をぶちまけた。そして、助けに行く風を装い炎の中に飛び込んで行く。

 炎の中、見渡すと演者達は既に舞台を去っていた。それを確認した後に、私は熱い喝采と歓声を浴びながらそっと静かに礼をする。


 愚か者の復讐譚――――これにて、御仕舞。

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