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美しい

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 その日、私は星を見た――本当に、その程度の感想しか抱かなかった。

 所謂、天体観測という行為。林間学校のイベントの一つとして行われたそれは恐らく、天文学への興味や星の美しさを教える為のものだと思う。


 けれど、私には。空に光るそれらが美しいとも思わないし、まして学びたいなどとは微塵も考えられなかった。

 無関心――と言うのが、今の感情を表す言葉として最も適切だと思う。好きの反対をそれだとするなら、私にとってこれは「好きになれない」ものなのだろう。


 周囲の面々は、見上げた空を口々に「綺麗」と言っている。その姿を眺めて、私は自分が異端であると言う事実を再確認した。

 決して、無感情な人間ではないつもりだ。お笑いを見れば普通に笑うし、取っておいたプリンを勝手に食べられれば普通に怒りを露わにする。


 けれど――ただ。どうやら私には、美しいものを美しいと思う感性が、私には欠落しているらしかった。

 芸術も、宝石も、幾年に一人の美女も。人が美しいと言うそれらが、私にはそう思えなかった――いや、心を微塵も動かされなかった。


 敢えて言い換えたのは、そもそも「美しい」と言う感覚がよく分からないからだ。

 もしかしたら無意識に感じているかも知れない。未知を即座に「それ」だと認識することは、私には不可能なことなのだ。


 だから、確かなことだけを言った。ただ「見た」と言う事実だけが残って、他に何の感情も湧かなかったと言う事実を。


 心が動かない。それでは、AI再現の単なる機械だ――そう思うと同時、私は自分の胸を刺し貫いた。


 無論、「そんな感覚」というだけである。胸にとん、と握り込んだ手を当てて、ナイフを刺したようにした。

 意識が遠のくような感覚。偽りの感覚ではあるのだろうが、それでも――――


 僅かに見た幻覚――血まみれで死んでいる自分の姿は、変に美しく見えた。

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