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得る、得ない

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「幸福とは、手に入らないものの呼称だ。

 手に入ったのならば、人はそれを「幸福」ではなく「当然」と呼ぶ」


 気紛れに開いた小説は、そんな言葉で始まっていた。

 どうやら、幸福論や人生論を宝くじに当たって突然大金持ちになった主人公の視点から描く物語らしい。そこには周囲からの関わり方が変化した主人公の苦悩や、金を得ても尚変わらない愛情に対する感動などが丁寧かつ繊細に綴られている。


 この作品からは御涙頂戴の感動もの、という感じはあまりしない。かと言って喜劇、或いは悲劇という表現も正しくないように思える。

 恋や友情と言った人間関係を美しく丁寧に描写していながら、けれど全く共感できない。主人公の倫理や感性はごく平凡なものとして描かれているのに、だ。


 一瞬、自分が異常なのかと思いかけた。

 主人公の感性が平凡であるのなら、それに共感できない自分がおかしいのではないか……と。

 しかし、そういう訳でも無いらしい。ネットでの評価を見てみると、僕と同じような感想を抱くものが大半のようだった。


 「もう読むことは無いだろうな」そう思いながら僕は本を棚に仕舞った。けれど違和感の正体が気になって、結局すぐにまたそれを手に取ってしまう。


 この物語は、こんな一文で締め括られていた。


「得たものは失くしたが、きっとこれで良かったのだろうと私は思う。多額の金など、夢に見ているくらいが一番幸せなのだから」


 それは、あまりに平凡な――けれど、どこか人間らしくないようにも感じられる結論。

 得ることと、敢えて得ないこと。どちらが真に幸福なのか――僕は、呆然と考え続けた。

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